#映画レビュー

【映画】バズ・ライトイヤー

キャプテン・アメリカのように頑固一徹なヒーローが困難を乗り越えて任務を果たすストーリーだと思っていたが、背後にあるのは思いのほか深いテーマだった。宇宙に取り残されて故郷に戻れない人たちを救おうとするライトイヤーに対し、当の本人たちはそこに…

【映画】コーダ あいのうた

今年度のアカデミー賞受賞作品というより、フランス映画「エール!」のリメイクという点で気になっていた。「エール!」はいかにもフランス映画らしいエスプリにあふれる作品だっただけに、アメリカを舞台にどう置き換えるのかに興味があった。結論としては…

【映画】ドライブ・マイ・カー

ほぼ3時間という長尺の作品だが、エンターテイメントというよりは芸術作品で、気を抜くタイミングが見当たらないほどに様々な要素を詰め込んでいる。テーマはコミュニケーションのあり方なのだろうが、それを表現するのに主人公の亡き妻のシーンをプロローグ…

【映画】ムーンフォール

Amazonプライムの独占配信ということで、かなり煽り気味の宣伝をしていただけに、結構期待していた。しかし、見始めてすぐに、これをシリアスなSFドラマとして見ることが難しいと気づき、最終的にはコメディとして見るべきものだと理解した。アメリカンなド…

【映画】パーム・スプリングス

タイムループものとしては「隔たる世界の2人」を思い出すが、人種差別のような社会問題に切り込んでゆくわけではなく、人生をテーマにしているような作品だ。主人公のナイルズは、友人の結婚式が行われる11月9日を何度も繰り返して体験する。友人の結婚式と…

【映画】氷がすべてを隔てても

デンマークが米国とのグリーンランド領有争いで、北部のピアリー地方を別の島であると主張する米国に対し、グリーンランドと地続きの一部であることを確認した史料を確保するために派遣された2人の探検隊の物語。最初はたくさんの犬にそりを引かせていたが、…

【映画】幸せへのまわり道

実在した米国の子ども向け番組のパーソナリティ、フレッド・ロジャースをトム・ハンクスが淡々と演じる一方、マシュー・リースはクセのあるエスクァイアの記者として自身の死にゆく父親と向き合う。間だったり表情だったりに表れるふたりの表現力が素晴らし…

【映画】フレッシュ

静かでスタイリッシュな序盤から、ホラー、スリラー、スプラッタという展開に引きずり込まれる本作は、心の準備をしてから見ないと「食当たり」を起こすこと間違いなしだ。タイトルの「フレッシュ」は"fresh"なのだが、"flesh"の意味も含めて複数の意味を持…

【映画】ウィークエンド・アウェイ

クロアチアのスプリトで週末を過ごすはずが、とんでもない事件に巻き込まれてしまうというストーリー。途中、意外な展開で終わりそうになり、これではあまりに陳腐だと思っていたら、さすがにそこからもう一波乱作ってくれた。キャストがいかにも低予算だし…

【映画】21ブリッジ

内容としては十分に見応えがあって、コンパクトにまとまった悪くない作品なのだが、製作サイドのタイトルのつけ方やアピールの仕方にはどうにも違和感があり、作品を理解していない印象が強い。タイトルの「21ブリッジ(21 bridges)」は、マンハッタン島に…

【映画】ミュンヘン 戦火燃ゆる前に

価値観というものは、非常に扱いにくいものだ。ナチスドイツが第2次世界大戦に向かうトリガーになったズデーテン地方の併合を巡るミュンヘン会談に焦点を当てたストーリーだが、ズデーテンはドイツ系住民が多いエリア。民族としての統合は、価値観が近く共感…

【映画】エターナルズ

評価も難しいし、好き嫌いも分かれそうな何とも言い難い作品だった。まず何よりも、誰がヒーローで誰がヴィランなのかよくわからない。それは本作が打ち出す多様性の一部であるとも言えるが、映画を楽しみ上で方向性が示されないのは非常に居心地が悪い。僕…

【映画】リトル・シングス

これだけ配信系ドラマが充実し、内容や作りのレベルも格段に向上していると、「映画」とは何なのだろうと考えざるを得ない。一般的な長さである2時間前後というのは、人を映画館という閉鎖環境に閉じ込める前提で作られているとしか思えないので、それだけ濃…

【映画】ドント・ルック・アップ

コメディの要素をふんだんに織り込みながら、米国の政治や社会を痛烈に皮肉る内容はブラックコメディと呼んでしまっては失礼なくらい上質なものだった。かつてユカタン半島に衝突して恐竜絶滅を引き起こした彗星もあるのだから、政府や真剣に受け止めるべき…

【映画】ノマドランド

ロードムービーに括られることが多い作品ではあるが、この作品は「パリ、テキサス」とも「ファンダンゴ」とも「テルマ&ルイーズ」とも似ていない。確かに一箇所に留まらずに漂流する生活を描くという点ではロードムービーなのだが、これはもっとドキュメン…

【映画】フリーガイ(ネタバレあり)

何の予備知識もなく見たところ、世界観のあまりのごった煮感に最初はがっかりしていたのだが、ゲームの中に入り込んでしまうという設定がわかると一気に面白さが増してきた。何でもありだし、リセットも可能という世界では、こんな感じに時間が進んでゆくの…

【映画】ウィンド・リバー

”Wind Riverは、ワイオミング州のネイティブアメリカン居留地で起きた暴行殺人事件を追うストーリーだが、MCUファンとしてはキャストが気になる。主演はホークアイのジェレミー・レナーとワンダのエリザベス・オルセン。レナーはMCUでの脇役的な位置づけとは…

【Netflix】THE GUILTY/ギルティ

デンマーク映画を、アントワン・フークア監督が舞台をLAに置き換えてリメイクした本作。原作のデンマーク版を先日視聴し、その話をThe LATTE Tokyoでしたところ「リメイクがもうすぐ配信されますよ」と教えてもらって楽しみにしていた。基本的には原作に忠実…

【映画】THE GUILTY/ギルティ

約1時間半をほぼ一人芝居で、そして警察の救急通報コールセンターの一角だけという作品なので、クオリティはひとえに主演ヤコブ・セーダーグレンの演技力にかかっている。通報の音声と主演の表情で事件が語られるのだが、その緊迫感はリアルな映像よりも想像…

【映画】ナイブズアウト

「名探偵と刃の館の秘密」というハリーポッター調のサブタイトルを見ても、中身もわからなければ興味も沸いてこないが、PVは「その先」を知りたくなるものだった。この作品は基本的に演劇仕立て。台詞回しもキャラクター設定もメリハリをつけているので、真…

【Amazonプライム】シンデレラ

評判があまりよくないことは把握した上で見たプライムビデオの「シンデレラ」は、ミュージカル仕立てということもあって役者の台詞も芝居ががっているので、そのあたりの違和感で高評価が得られていないような気がした。シンデレラをベースにしてはいるが、…

【映画】テネット

前評判に違わず、わかりにくい作品だった。設定自体が複雑なこともあるが、物理現象である「対生成/対消滅」や「エントロピーの減少」といった事象をエッセンスだけ使っていることも大きいように思う。これらの事象は、一般教養レベルでは興味を持っている僕…

【映画】トゥモロー・ウォー

Prime Videoの「Tomorrow War」は、設定と構成だけ見れば明らかにB級映画でしかないのだが、細部にこだわって予算を掛ければ十分に娯楽性のある作品に仕上がることを実証しているという意味で、価値のある作品だ。CO2問題と地球温暖化、そして親子の愛情がテ…

【映画】ANNA/アナ

シナリオはいかにもフィクションだし、アクションだってどう見ても不自然に主人公が強い。それでもこの展開の見せ方には、つい引きずり込まれてしまう。とにかく緊張感があるのだ。次のシーンへの期待感を徐々に、しかし確実に高めて裏切らない方向に物語を…

【映画】サウンド・オブ・メタル

この作品は、後天的に聴覚に障害を持った人を描いているが、その障害を克服するというよりは受け入れるに至るまでの物語だ。世の中には、状況を受け入れる人と何とかして変えようとする人がいる。例えばオフィスの空調が効きすぎると感じたときに、すぐに温…

【映画】この茫漠たる荒野で

アカデミー賞の作品賞ノミネートは逃したものの、美術賞、撮影賞、音響賞でノミネートされた「この茫漠たる荒野で」は、日本でこそ劇場未公開だが米国での評価は高かったようだ。実際に見てみると、南北戦争後のアメリカの広大な風景を巧みに捉えた映像がと…

【映画】インクレディブル・ハルク

いつもマーベルの話題につきあってくれるコーヒースタンドのスタッフから、「ハルクは面白くない」と聞いていた。それでも、MCU作品で見ていないものが「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズと本作だけになっていたので、見逃す手はないと思って見…

【映画】ミッドナイト・スカイ

Netflixオリジナルのこの作品は、原作となっている「世界の終わりの天文台」が魅力的な話なのだということがよくわかる。しかし、映画化作品としてはどうだろうか。タイムラインが錯綜するのは常套手段だとしても、ファンタジー要素を多分に含んだ内容を、か…

【映画】ザ・プロム

Netflixオリジナルの本作は、LGBTQという繊細な問題にベタに切り込んだ内容だが、ミュージカル仕立てにすることでストレートな主張を中和している。これこそはミュージカルの効用で、ストレートプレイの台詞では気恥ずかしくてわざとらしいものでも、軽快な…

【映画】Mank/ マンク

この作品は、「ゴーン・ガール」や「ハウス・オブ・カード」のデイヴィッド・フィンチャーが父親であるジャックの脚本を映画化したもの。名作「市民ケーン」をオーソン・ウェルズと共同執筆したことになっているハーマン・マンキーウィッツの伝記のような展…