【映画】ナイブズアウト

「名探偵と刃の館の秘密」というハリーポッター調のサブタイトルを見ても、中身もわからなければ興味も沸いてこないが、PVは「その先」を知りたくなるものだった。この作品は基本的に演劇仕立て。台詞回しもキャラクター設定もメリハリをつけているので、真実味が薄い。それが苦手な人には、どうにもハマらないだろう。僕も、この点に気づいて割り切るまでは、違和感を拭えなかった。演劇的な作品は、まさに日本映画が得意とするところ。余計なところに予算をかけずに、ストーリーとシナリオ、演技で魅せるものだ。この作品を日本でリメイクしても面白そうだ。

主演で探偵を演じるダニエル・クレイグと実質的な中心人物を演じるクリス・エヴァンスは、日頃の彼らのキャラクターとは一味違った役どころで、意外な使われ方をしている。ジェームズ・ボンドはにこやかなコメディタッチで謎を解く探偵だし、キャプテン・アメリカはダークサイドなのだ。それがまた、この作品の見どころでもある。特にクリス・エヴァンスの悪ぶった表情は、それを見てしまうとキャプテン・アメリカの正義感が疑わしく感じられてしまいそうだ。

主演女優のアナ・デ・アルマスは抑えた役どころなのであまり目立たないが、トニ・コレットのアクの強い演技も見逃せない。「あの人がこんな演技を」という部分は監督兼脚本のライアン・ジョンソンの腕の見せ所だが、きっと彼はニヤニヤしながら構想していたのだろうなと思うと、それだけで楽しくなってしまう。来年公開予定の続編にも期待しよう。