【伊坂幸太郎】マリアビートル

映画「ブレット・トレイン」を見たという話をした相手に「原作の方がもっと面白い」と言われたことから、その日のうちに角川文庫版を購入して一気に読み切った。600ページに迫る内容で、映画より複雑な構成になっていてわかりにくさもあったものの、展開が速いこともあって、続きが気になって手放せなかった。

伊坂幸太郎の作品を読むのは初めてだったが、とにかく言葉の選択が絶妙で、そこには明確な意図があった。僕にとっては、普段頭の中に置いている要素が言語化されていることも、作品に引き込まれた要員になっている。わかりやすい例としては「マーフィーの法則」もそのひとつだし、主要な登場人物のひとりである王子が投げ掛ける「なぜ人を殺してはいけないの?」という疑問もそうだ。この疑問に対して、様々な回答がなされるが、どれも自分で考えたことがあるものなのだが、それぞれに背景となる価値観が異なることが明確に読み取れたことに少なからず驚きがあった。

映画版では東海道新幹線の東京~京都に翻案されていたが、原作では東北新幹線の東京~盛岡が舞台で、「はやて」と「こまち」が連結されていることも物語の構成に意味を与える要素になっていた。原作の上野は映画では品川に、大宮は新横浜にという部分は自然な移行だが、「のぞみ」にしてしまうとその先は名古屋にしか停車しないので、原作の「仙台から先は、盛岡だけでなく一関、水沢江刺などにも停車する方のはやて」を再現するためには、「ひかり」を模した「ゆかり」にして静岡や浜松にも停める必要があったのだろう。

原作ではドライな真莉亜が七尾と絡む関係性が箸休めのような位置づけにあるが、同時に物語に現実味を与えていたようにも思う。その意味では、映画版のサンドラ・ブロックの使い方は、原作の味わいにかなり忠実だったのではないか。

続編の「777」もこの二人が登場するようなので、少し時間を空けて読んでみようと思っている。伊坂の作品を読むにはパワーも必要だし、現実との境界があいまいになってしまいかねない。

【U-23アジアカップ】カタールー日本

事故のようなゴールで先制するも、事故のようなゴールで追いつかれたところで相手GKが退場。ここから日本は、ボールを持ちながら攻め切れない時間が続き、セットプレーから逆転されてしまう。

数的優位の下、焦る必要はない。しかし、だからといってボールポゼッションしたままじりじりと攻めるのでは、自分たちのスペースを消すだけ。カタールにゴール前を固められて高さでは優位に立てず、今大会のデフォルト戦術である低いクロスを入れるもなかなかチャンスがない。だからこそ、67分にセットプレーから生まれた木村のゴールは貴重だった。

木村は、西尾のサスペンションでチャンスが回ってきた選手で、UAE戦でも先制点を挙げている。こういうラッキーボーイが登場することが求められる中、地味ではあるが素晴らしい貢献をしてくれた。数的不利で疲れが顕在化する後半残り半分というタイミングで追いつかれたカタールの選手のとっては、精神的に厳しい失点だったはずだ。

延長にはもつれ込んだものの、決勝点はFWがしっかり決める。この試合唯一と言ってよい日本らしい展開から、ここまでシュートをミスし続けていた細谷が叩き込む。これで終わりではなく、さらに内野航太郎が続いたことでカタールは完全にモチベーションが切れてしまった。

とはいえ、これでパリオリンピックを決めたわけではない。あの韓国ですらインドネシアに敗れて大会を去っているくらいなので、今のアジアを甘くみてはいけない。ギニアとの大陸間プレーオフに回る前に、出場権を獲得したい。

【ネコ】ニコに蹴られています

この画像を見ると、僕がニコを踏みつけているように見えてしまうでしょうね。でも、実はニコが前足で僕の足を捕獲して、後ろ足で蹴りつけているところなのです。朝、出勤しようとするタイミングで、ときどきこれを仕掛けてくるのですが、きっと親しみを込めた行為なのですよね…

【映画】ブレット・トレイン

場面のほとんどを列車の車内という設定にしたことで、予算を俳優陣の人件費に回したような印象が強い作品。内容は、欧米社会におけるステレオタイプな日本の文化と、実際の日本が持つ習慣をうまく織り交ぜてパロディにしているところが、絶妙なバランスだった。ヤクザが和服姿で刀を振り回す一方、ゆるキャラとコラボした超特急で車内販売スタッフが腰の低いサービスを提供する。これは、わかる人にしかわからないかもしれないが、なかなかツボにハマっていた。

キャスティングも贅沢だ。サンドラ・ブロックはチョイ役と呼ぶのがふさわしいくらいにしか登場しないし、マシ・オカは新幹線「ゆかり」の車掌が似合っている。「アベンジャーズ」でクイックシルバーことピエトロ・マキシモフを演じたアーロン・テイラー・ジョンソンと「エターナルズ」でファストス役のブライアン・タイリー・ヘンリーが実質的には主演と言ってもよい活躍で、「らしさ」を感じさせる味を醸し出していた。

東京から京都に向かうという設定だが、車窓の風景には大きな違和感があった。米原を過ぎてから富士山が見えるとか、静岡の駅前に大都会の高層ビルが連なるなど現実的ではないが、本作全体にコメディとフィクションの香りが満ちているので、細かいことを気にしても仕方ないだろう。

ちなみに僕にとってタイムリーだったのは、車内に蛇が出現すること。僕は蛇が大の苦手だが、ちょうど数日前に「こだま」の車内を蛇が這っていたという報道があったばかり。しかも、次の水曜日には出張で東京から京都まで新幹線に乗る予定があるので、夢に見てしまいそうな嫌な設定だった。

【ドラマ】バイアスロン殺人事件

タイトルだけ見ると、日本のドラマにもよくある「ご当地番組」のようでもある。地元の刑事が温泉地の風情を交えながら捜査するような定番の構成を想定してしまったのだが、実はかなり骨太で本格的な社会的要素を交えた作品だった。

原題の"The Best of Us"が表すように、バイアスロンという競技はひとつの要素でしかなく、舞台となるのはスキーリゾートと呼ぶには小規模すぎるものの、世界的にはマイナー競技ながらフランス国内ではそれなりに知名度のある競技が開催されるワールドカップ会場となる山村という設定だ。日本のバイアスロン選手は銃を扱うという特殊性もあって、ほぼ自衛隊に限られる状況にあるが、少なくともフランスではそうではないということなのだろう。

そして、単なるスポーツドラマでは終わらずに、人種問題やLGBTQがかなり大きなウェイトで扱われる。これがドラマを見る上での予想を大きく覆された点だ。スキーといえばスラブ系や北欧系などの白人中心というイメージがあるが、黒人が捜査に当たり、殺人事件の根幹にはゲイというテーマが介在する。

その意味でも、「バイアスロン~」という邦題は誤解を増幅させるもの。もともと、タイトルでの釣りで視聴率を上げる必要性が高いとは思えないので、もっと実態と世相に即した見せ方をすべきではなかったか。このミスマッチがもたらすネガティブな効果は、恐らく取り返しがつかないほどに大きいのではないだろうか。

【大分―いわき】トリニータに打つ手なし

ただでさえ試合に使えない選手が目白押しの中、前半の早い時間に薩川が負傷交代。っそんな状況での選手のやり繰りは、大変だろうとは思う。しかしながら、それでもプロとしてJ2のクラブとして、いわき戦の内容は恥ずかしいを通り越して情けないものだったとしか言い様がない。昇格に絡むのが難しいであろうことは理解していたが、これでは降格の危機がすぐそこにある。

何より恥ずべきは、スローインをマイボールにできずにロストしまくったこと。判断は遅いし、相手の出足に押されて思うようにプレーできなかった。渡邉が裏を狙い、ビルドアップに手数を掛けずに早いタイミングで放り込む戦術は狙っていたのだろう。ボールの収め所がないことは前節までで明らかだったし、薩川と松尾を起用することでビルドアップを捨てたことは伝わってきた。

中盤で判断が遅い上に、パススピードも遅いことが、トリニータの最大の欠点だ。ペレイラは本来ボランチの選手で、大分に来た初年度にはボランチで起用された試合もあったのだが、彼が繰り出すパスが速すぎて周囲は収められなかった。

また、ボールを持てる選手は片野坂監督が好まない。正確に言えば「持ちすぎることを嫌う」ということだが、かつて在籍した前田や川西が重用されなかったことから、その傾向は明らかだ。

ボールを持てない、収められない上にビルドアップも捨てるのでは、もはや片野坂監督に打つ手は残っていない。茂は今節戻ってきたが、サムエルや町田、梅崎らに期待しないわけにはいかないし、そもそも4バックに固執する必要もないだろう。恐らく片野坂監督はGKを入れ替える時期を待っていたはずで、今節の濵田のプレーを見る限り、次節は西川を起用するのではないかと思われる。そう考えると、次の熊本戦は転機になる可能性もあるが、どん底への始まりにもなりかねない。

【渋谷カフェ】Hi, Coffee Hey, Herb

渋谷の鴬谷町にあるコーヒースタンドですが、このお店を特徴づけているのはハーブティーなど豊富なハーブ系メニュー。すでにブレンドされたものもありますが、その日の自分の状態や希望をざっくり伝えるだけで店主がその場で調合してくれます。例えば「この後長い会議なので、落ち着くハーブティーを」と伝えたときには、「利尿作用はない方がいいですね」と気を回してくれるのです。

水出しのアイスハーブティーや牛乳を使ったハーブラテ、エルダーフラワーの自家製コーディアルのドリンクなどもあるし、コーヒーも決して引けを取らない味わい。何にするか迷ってしまい、週に何度も通ってしまうほどです。

ホットのハーブティーは、飲み切った後にお湯を足せばもう一杯分はしっかり味が出ます。これは店主も推奨していて、「2杯飲まないともったいない」と言ってくれます。僕はまだ利用していませんが、葉の状態での販売も行っているので、家で楽しむのもよさそうですね。

HI,COFFEE HEY,HERB(@hicoffee.heyherb.shibuya) • Instagram写真と動画