【映画】ドント・ルック・アップ

コメディの要素をふんだんに織り込みながら、米国の政治や社会を痛烈に皮肉る内容はブラックコメディと呼んでしまっては失礼なくらい上質なものだった。かつてユカタン半島に衝突して恐竜絶滅を引き起こした彗星もあるのだから、政府や真剣に受け止めるべきところ、この彗星発見と軌道計算を軽視したあげく、中間選挙の集票のために使おうとする。

そんな無責任きわまる大統領を演じるのは、メリル・ストリープ。その息子で大統領補佐官を務めるジェイソン役のジョナ・ヒルとともに、コメディ要素の展開を一手に引き受けていた。この無責任さを自己の論理で塗り固めるところは、ドナルド・トランプを思わせる。息子が補佐官であるところも、いかにも彼を風刺しているように見えるが、彼を大統領に当選させた米国市民も含めて風刺の対象なのだろう。

そして、レオナルド・ディカプリオだ。終盤には自信あふれる天文学者という雰囲気を醸し出すようになるのだが、序盤から中盤にかけては学者にありがちな「学術的な整合性にこだわってポイントが絞れない」トークで演技力を見せつける。とにかく、ディカプリオとメリルの演技だけでも、十分満足できるくらいのクオリティなのだ。ディカプリオがちょっと太りすぎなのは、役作りによるものだろうか。チョイ役のアリアナ・グランデは歌唱シーンもあり、あっという間の145分だった。