【ドラマ】バイアスロン殺人事件

タイトルだけ見ると、日本のドラマにもよくある「ご当地番組」のようでもある。地元の刑事が温泉地の風情を交えながら捜査するような定番の構成を想定してしまったのだが、実はかなり骨太で本格的な社会的要素を交えた作品だった。

原題の"The Best of Us"が表すように、バイアスロンという競技はひとつの要素でしかなく、舞台となるのはスキーリゾートと呼ぶには小規模すぎるものの、世界的にはマイナー競技ながらフランス国内ではそれなりに知名度のある競技が開催されるワールドカップ会場となる山村という設定だ。日本のバイアスロン選手は銃を扱うという特殊性もあって、ほぼ自衛隊に限られる状況にあるが、少なくともフランスではそうではないということなのだろう。

そして、単なるスポーツドラマでは終わらずに、人種問題やLGBTQがかなり大きなウェイトで扱われる。これがドラマを見る上での予想を大きく覆された点だ。スキーといえばスラブ系や北欧系などの白人中心というイメージがあるが、黒人が捜査に当たり、殺人事件の根幹にはゲイというテーマが介在する。

その意味でも、「バイアスロン~」という邦題は誤解を増幅させるもの。もともと、タイトルでの釣りで視聴率を上げる必要性が高いとは思えないので、もっと実態と世相に即した見せ方をすべきではなかったか。このミスマッチがもたらすネガティブな効果は、恐らく取り返しがつかないほどに大きいのではないだろうか。