【映画】ANNA/アナ

シナリオはいかにもフィクションだし、アクションだってどう見ても不自然に主人公が強い。それでもこの展開の見せ方には、つい引きずり込まれてしまう。とにかく緊張感があるのだ。次のシーンへの期待感を徐々に、しかし確実に高めて裏切らない方向に物語を進めてゆく撮り方は、さすがにリュック・ベッソン監督ということだろう。

役者の演技も通好みだが、特に主演のサッシャ・ルスとその黒幕的な位置づけのオルガを演じるヘレン・ミレンの、かなり「すれた」というか世間の常識に迎合しないスタイルを表情や台詞回しで見せるところに見応えがあった。それに比べると、男優陣の演技は「あくまで添え物」というテイストが感じられて、それもまた作品のスパイスになっている。製作が米国とフランスというあたりが、いかにもそれらしいと言える。

リュック・ベッソン作品としてはニキータやルーシーの系譜にある作品だが、そんな中でも華やかな部分に生々しくヴィヴィッドな感覚を盛り込んでいる。パリの街も、リアリティが感じられないくらい作りこまれた設定になっているので、異次元にでも旅しているかのようだ。スパイものは非現実感が味わえるから好きなのだが、まさにその感覚を楽しめる作品だ。