【映画】パーム・スプリングス

イムループものとしては「隔たる世界の2人」を思い出すが、人種差別のような社会問題に切り込んでゆくわけではなく、人生をテーマにしているような作品だ。主人公のナイルズは、友人の結婚式が行われる11月9日を何度も繰り返して体験する。友人の結婚式となれば非日常、つまり「ハレ」の日と考えてもよさそうだが、この作品の中ではあくまで日常の延長という認識のようだ。

結局のところ、ナイルズと一緒にその世界に囚われてしまったサラが、繰り返される日常を変えるにはリスクを伴うことに気づき、そしてリスクを負うことで新たな生活が獲得できるというストーリーなのだと思う。タイムループであることは一つの仕掛けであって、「繰り返される日常」のメタファーのようなおのとして使われているのだろう。僕は、個人的な思いとして、毎日を特別な日にしたいと思っている。アートにしてもグルメにしても、何かその日ならではのイベントが発生することで、その日が「何でもない日」ではなくなる。そのためには、毎日少し違うルートでオフィスに向かったり、そのために少し早起きをしたりということも含まれる。それこそが、マイルズたちが負った爆薬のようなものなのだ。

90分という短い作品で、同じシーンが繰り返されることもあってあっという間なのだが、撮影や編集も細部にこだわっていて秀逸だ。プールのシーンには、そのこだわりが凝縮されているように思う。キャストとしても、J.K.シモンズやピーター・ギャラガーがしっかり脇を固めているので、安心して見ていられた。