【Amazonプライム】シンデレラ

評判があまりよくないことは把握した上で見たプライムビデオの「シンデレラ」は、ミュージカル仕立てということもあって役者の台詞も芝居ががっているので、そのあたりの違和感で高評価が得られていないような気がした。シンデレラをベースにしてはいるが、設定と主題はかなり変更されている。母親と二人の姉は意地悪ではあるのだが、それほどひどいものではなく今のご時世の合わせていて、虐待といえるシーンはあまりない。

この作品の主題は「予定調和の人生を捨て、キャリアは自分で選ぶ」ということ。王子は単に美しい娘を嫁に迎えたいというモチベーションではなく、王家を継ぐ道はそれを望んでいる妹に委ね、自らは好きなことをするためにシンデレラと歩む人生を選ぶ。そしてシンデレラは、王家への嫁入りではなく服飾デザイナーとしての道を歩むべく、王子を捨ててタチアナ女王を「雇い主」に選ぼうとする。これはまさに、ジェンダーの問題であって、決して子供向けのファンタジーではないのだ。

ただ気になるのは、製作陣はこの作品をどのように視聴してもらおうと想定していたのかということだ。前述したように、親子でほのぼの見る作品ではないし、大人のカップルが見るには作りがちょっと子供じみている。音楽も、いきなりクイーンやマドンナ、EW&Fの楽曲が使われていて、年代的には40代後半以上にハマりそうな選曲。最終的にはエド・シーランも使っているが、それがかえってターゲットの定まらなさを感じさせてしまうのだ。視聴者がどのようなシーンでこの作品を見るか。それはまさにUX、すなわユーザーエクスペリエンスの問題であり、それをしっかり想定して製作しなければ、どんなに素晴らしいメッセージでも受け手には届かない。

総評としては「おもしろい」作品で、見応えもあった。それだけに、この中途半端な作りにもったいなさを感じてしまうのだ。