【映画】ブレット・トレイン

場面のほとんどを列車の車内という設定にしたことで、予算を俳優陣の人件費に回したような印象が強い作品。内容は、欧米社会におけるステレオタイプな日本の文化と、実際の日本が持つ習慣をうまく織り交ぜてパロディにしているところが、絶妙なバランスだった。ヤクザが和服姿で刀を振り回す一方、ゆるキャラとコラボした超特急で車内販売スタッフが腰の低いサービスを提供する。これは、わかる人にしかわからないかもしれないが、なかなかツボにハマっていた。

キャスティングも贅沢だ。サンドラ・ブロックはチョイ役と呼ぶのがふさわしいくらいにしか登場しないし、マシ・オカは新幹線「ゆかり」の車掌が似合っている。「アベンジャーズ」でクイックシルバーことピエトロ・マキシモフを演じたアーロン・テイラー・ジョンソンと「エターナルズ」でファストス役のブライアン・タイリー・ヘンリーが実質的には主演と言ってもよい活躍で、「らしさ」を感じさせる味を醸し出していた。

東京から京都に向かうという設定だが、車窓の風景には大きな違和感があった。米原を過ぎてから富士山が見えるとか、静岡の駅前に大都会の高層ビルが連なるなど現実的ではないが、本作全体にコメディとフィクションの香りが満ちているので、細かいことを気にしても仕方ないだろう。

ちなみに僕にとってタイムリーだったのは、車内に蛇が出現すること。僕は蛇が大の苦手だが、ちょうど数日前に「こだま」の車内を蛇が這っていたという報道があったばかり。しかも、次の水曜日には出張で東京から京都まで新幹線に乗る予定があるので、夢に見てしまいそうな嫌な設定だった。