【映画】21ブリッジ

内容としては十分に見応えがあって、コンパクトにまとまった悪くない作品なのだが、製作サイドのタイトルのつけ方やアピールの仕方にはどうにも違和感があり、作品を理解していない印象が強い。タイトルの「21ブリッジ(21 bridges)」は、マンハッタン島に架かる橋の数。麻薬がらみの犯罪を追うべく、マンハッタン島を一晩封鎖するという展開だ。

しかし、本作の見どころは、決してそこではない。マンハッタンという世界の経済の中心を封鎖するサスペンスとして見るなら、これは壊滅的な駄作である。緊迫感やスリルが、まったく感じられないのだ。それよりも、チェイシングのシーンでの独創的なアクションは面白いし、抑えた演技ながらチャドウィック・ボーズマンとJ.K.シモンズの対峙も映画らしい緊張感を味わわせてくれる。マンハッタン封鎖の緊迫感を描きたかったのなら大失敗だが、名優と撮影、編集の醍醐味を見せるのであれば大成功だと言えるだろう。

実は、この映画を見た直後にNetflixのドラマ「The defeated 混沌のベルリン 」をたまたま見たのだが、「21ブリッジ」で犯罪者を演じていたテイラー・キッチュがこちらでは主演刑事を演じており、その対照的な役どころに驚いた。どちらも違和感なく、同じ俳優だとすぐに気づかなかったほどなので、演技力を賞賛するしかないだろう。