【映画】リトル・シングス

これだけ配信系ドラマが充実し、内容や作りのレベルも格段に向上していると、「映画」とは何なのだろうと考えざるを得ない。一般的な長さである2時間前後というのは、人を映画館という閉鎖環境に閉じ込める前提で作られているとしか思えないので、それだけ濃密に仕上げることが映画の宿命なのではないだろうか。

さて本作「The Little Things」だが、ストーリーとしては歯切れが悪く、終盤の描写にも物足りなさを感じてしまう。では駄作なのかと言われれば、答えはNOだ。なぜなら、これはラミ・マレックの演技力をひたすら楽しむものだから。もちろんデンゼル・ワシントンジャレッド・レトも名優で見せ場はあるのだが、序盤で高飛車だったマレック演じる刑事が徐々に弱さを出してゆく流れにこそ見応えがある。

タイトルは「ささいなこと」という意味だが、これはラストのワシントンの行為の裏にあるマインドだろうし、「大義」の対義語として使われているように感じる。大義を果たすために捨ててもよいもの。その解釈は、まさに人それぞれの価値観に裏付けられている。時間の経過によっても、その持つ意味は変化する。マレック演じる刑事のこれからの人生にとっては、決して「Little」ではないだろう。