【映画】氷がすべてを隔てても

デンマークが米国とのグリーンランド領有争いで、北部のピアリー地方を別の島であると主張する米国に対し、グリーンランドと地続きの一部であることを確認した史料を確保するために派遣された2人の探検隊の物語。最初はたくさんの犬にそりを引かせていたが、ホッキョクグマに襲われたり食料不足で食べるために殺したりするうちに、ついに犬がいなくなってしまう。このあたりが人間のエゴでもあり、それだけ過酷な北極圏の自然環境であるということだ。

無線もなく、書き置きだけ残して置き去りにされてしまい、2年以上をグリーンランドで過ごす2人。幻影を見たり、腫瘍を自分たちで切除したりと、限界に近い精神状態をニコライ・コスター・ワルドーとジョー・コールが好演している。終盤に帰国した2人がステージで喝采を受けるシーンでは、そのセレブ然とした姿がグリーンランドでの極限生活における姿とまったく異なるので、その違いにも驚いた。演技やメイク、編集など、いろいろな要素が絡んでの結果だろう。

僕はなぜか北の海に惹かれるところがある。「北氷洋」もそうだったが、バフィン湾とかピアリー海峡、北西航路という単語に底知れない郷愁のようなものを感じてしまうのだ。同じ極地でも、南極大陸に関してはあまりそのような気持ちにはならない。これは単に、人間社会の文明が北に寄っていたことで歴史の深さがあるということなのか、自分のDNAに何かが刻みつけられているのか。答えが見つかるはずもないが、心には抱き続けたい思いだ。