【MARVEL】ウルトラマン

f:id:tatanchat:20220108090355j:plain

マーベルと円谷プロのコラボで実現したアメコミ版ウルトラマン。第2巻「ザ・トライアルズ・オブ・ウルトラマン」の出版を機に、第1巻の「ザ・ライズ・オブ・ウルトラマン」と合わせて読んでみた。時間軸や設定は大幅に変更されているものの、ハヤタとウルトラマンが融合している点など、原作を生かしている部分もあるのはありがたい。現代に置き換えられているので、科学特捜隊や隊員の設定も変わっているが、制服は原作に忠実に描かれている。

原作のフジ・アキコは「フジ・キキ」になっているが、これは英語圏のニックネームのつけ方としてはありがちなもの。「アキヒコ」が「キコ」になったりするので、「アキコ」が「キキ」になるのは原作への敬意を感じられる。髪型もフジ隊員を思わせるので、原作でメフィラス星人に仕向けられた「巨大フジ隊員」もアメコミ版で見てみたいものだ。ムラマツキャップとハヤタは原作より若く、やんちゃな雰囲気。イデ隊員は研究者の要素を強めた容姿になっている。

何よりもアメコミ版では、SF考証が絶妙だ。原作ではあまり科学的な根拠は提示されず子供だまし感があったが、そこはさすがマーベル。活動時間が3分間に限られることや怪獣の突然の襲来にうまく説明をつけている。そしてウルトラセブンモロボシ・ダンも登場し、このあたりからはかなり原作を逸脱した方向へ進む予感。次回作にも期待できそうだ。

【ドラマ】ハンナ ~殺人兵器になった少女~

年末年始に、Amazonプライムで「ハンナ」を一気見した。ルーマニアの森から始まり、ヨーロッパ各地を舞台にしているが、都会だけでなく地方都市や農場、森などが描かれる。カナダや北欧ドラマでは、このように都会ではない環境を舞台にした作品を多く目にするが、これはひとつの潮流なのかもしれない。温暖化やカーボンフリーの問題を考えるのに、森の存在は大きい。

「殺人兵器になった少女」という副題は、あまり作品の本質を表しているとは言えない。どちらかといえば、そのような洗脳を振り切る自我の物語だ。主人公ハンナを演じるエスメ・クリード・マイルズはクールは、クールな枠柄をうまく演じていた。大きな目から生じる「目ヂカラ」が印象的だ。しかし、本作において最も重要なのはミレイユ・イーノスの演技。マリッサ・ウィーグラーという誰の味方なのかわかりにくいキャラクターをシナリオ以上にふくらませたのは、間違いなく彼女の功績だ。

ストーリーはそれなりにおもしろいが、やや独り善がりな一面も。敵の警備員は弱すぎて、あっという間に複数が死んでしまう。そして自分たちはダイハード。この辺りを早めにフィクションと割り切らないと、なかなか物語に入り込めないだろう。

【ATPカップ】フランス―イタリア

シドニーで開催されたフランスとイタリアの一戦で、ダブルスはロジェ・バセラン/マルタン組がベレッティーニ/シンネル組と対戦した。ベレッティーニはシングルスに次ぐ連戦となったが、すでにシングルスで2勝しているイタリアがポイントを稼ぐべく全力で臨んだことがよくわかる。フランスは主力を欠き、ランデルクネクとユンベールをシングルスで起用する中で、スペシャリスト2人を揃えたダブルスは落としたくないところだったはずだ。

イタリアの1セットアップからセカンドセットはフランスがリードして進行するも、ロジェ・バセランのセカンドサーブがマルタンの後頭部を直撃する珍プレーでイーブンに。ネット際で勝負したいマルタンの立ち上がるタイミングが早すぎたものだったが、これを何とかタイブレークに持ち込んで帳消しにした。マッチタイブレークではマッチポイントも握ったフランスだったが、ロジェ・バセランのサーブを2本落としてイタリアにマッチポイントが移り、あっさり取り切られてしまった。

この試合、マルタンの表情が硬い一方で、シンネルがリラックスしてプレーしている様子が印象的だった。その影響かダブルフォルトも目立ったが、それを差し引いてもイタリアの方が余裕があったとみるべきだろう。今年のATPカップは地元オーストラリアの試合以外はスタンドが閑散としており、興行としてはうまく行っていないことが窺われる。全豪前のウォームアップとしての意味合いになっているなら、長くは続かないだろう。

【箱根駅伝】10区の難しさ

今年の箱根駅伝は、原監督の宣言通りに青山学院大学が圧倒的な強さで優勝した。早稲田や明治が低迷する一方、国学院創価、東京国際など新興勢力が台頭しており、大学のネームバリューだけではない強化策が不可欠であることを示している。シード権争いでは、最終10区で東海が順位を落とし、法政に奪われてしまった。今回は、この点に着目してみたい。

東海大学のアンカー吉冨は明らかに体調を崩しており、苦しい表情で走り続けていた。最下位に専修の中山も同様だったが、やはり10区特有の難しさがあったように思う。大手町で大声援を受けながら、仲間や取材陣の待つゴールへ飛び込まなければならないプレッシャーももちろんあるだろう。だが、それ以上に「待つ」ことの難しさもあるのではないか。前日の往路スタートから30時間近くも自分のスタートを待ち、その間には様々な情報が錯綜する。繰り上げスタート、途中棄権という可能性もあり、順位やタイム差も刻々と変化する。それらを長時間にわたって処理しながら待つという工程は、生易しいものではないはずだ。

王者青学は、昨年に続いて10区に中倉を起用したが、メンタル面も考慮しての選考ではなかったか。責任感が強すぎても苦しいだろうし、そうは言っても最後を飾るにふさわしい選手を起用したいだろう。そうなると、5区の山登りや6区の山下り同様、10区にもスペシャリストが求められるのではないだろうか。10区でスプリント勝負という状況にはなかなかならないし、他校と競り合う可能性も低いので、淡々と自分の役割をこなせる選手が適任なのだ。そう、強く感じた大会だった。

【料理】手作りおはぎ

f:id:tatanchat:20220102190116j:plain
あけましておめでとうございます!
今年もT's Whisperを、よろしくお願いします。

ここ数年、お正月には小豆を炊いてあんこを作っています。あんバタートーストやパンケーキ、ぜんざいなどに利用していましたご、今年はおはぎを作ってみました。甘さは控え目なので、飽きずに食べられます。きな粉には、きび砂糖と黒ごまを混ぜています。ただ、3合分作ってしまったので、ちょっと持て余していますが…

【書籍】6度目の大絶滅

"Under a White Sky"を原著で読んで興味を持ったエリザベス・コルバートの「6度目の大絶滅」を邦訳版で読んでみた。環境問題を扱っているのだが、コルバートの文章は押しつけがましさがなく、冷静に事実とそこから導かれる推論を語ってくれるので、ポジティブに読み進められる。政治家や企業、社会などを批判することに主眼が置かれてしまうアクティビスト系の言動には、どうしても拒絶反応を持ってしまうからだ。

二酸化炭素の問題を、これまでは温暖化という軸だけで捉えていたのだが、本作を読むことで、それが一面的な理解でしかないことに気づかされる。二酸化炭素量の増加によって海水が酸性化すると、例えば貝や甲殻類、サンゴなどが自分の体を形成するためには石灰化が必要なのだが、それが困難になってしまう。サンゴの白化は、単に海水温の上昇によるものだけではなさそうだ。今年はカニが不漁で、いつも親戚が送ってくれる大分・姫島の養殖車エビも生育が悪いようだが、もしかすると海水の酸性化が影響しているのかもしれない。

温暖化という側面だけを見ると、地球の長期的な氷河期~間氷期の気候変動の方がインパクトが大きそうだが、環境変化による生物種の絶滅や適応による変化が起きることで、これまでにない未知の要素が生じる可能性がある。それはつまり、これまでとはまったく異なる世界が地球上に展開されるかもしれないということだ。新型コロナのようなウイルスにも影響しているのかもしれない。

何よりも、この酸性化を引き起こした主体は人類だという事実がある。本作でコルバートは、これまでに地球に生物種の大絶滅を引き起こした彗星衝突のような事象に対し、人類がそれ以上の脅威になっていることを警告する。我々は脅威であり続けるのか、道を引き返すことができるのか。残された時間は、決して多くはない。

【映画】ドント・ルック・アップ

コメディの要素をふんだんに織り込みながら、米国の政治や社会を痛烈に皮肉る内容はブラックコメディと呼んでしまっては失礼なくらい上質なものだった。かつてユカタン半島に衝突して恐竜絶滅を引き起こした彗星もあるのだから、政府や真剣に受け止めるべきところ、この彗星発見と軌道計算を軽視したあげく、中間選挙の集票のために使おうとする。

そんな無責任きわまる大統領を演じるのは、メリル・ストリープ。その息子で大統領補佐官を務めるジェイソン役のジョナ・ヒルとともに、コメディ要素の展開を一手に引き受けていた。この無責任さを自己の論理で塗り固めるところは、ドナルド・トランプを思わせる。息子が補佐官であるところも、いかにも彼を風刺しているように見えるが、彼を大統領に当選させた米国市民も含めて風刺の対象なのだろう。

そして、レオナルド・ディカプリオだ。終盤には自信あふれる天文学者という雰囲気を醸し出すようになるのだが、序盤から中盤にかけては学者にありがちな「学術的な整合性にこだわってポイントが絞れない」トークで演技力を見せつける。とにかく、ディカプリオとメリルの演技だけでも、十分満足できるくらいのクオリティなのだ。ディカプリオがちょっと太りすぎなのは、役作りによるものだろうか。チョイ役のアリアナ・グランデは歌唱シーンもあり、あっという間の145分だった。