【書籍】6度目の大絶滅

"Under a White Sky"を原著で読んで興味を持ったエリザベス・コルバートの「6度目の大絶滅」を邦訳版で読んでみた。環境問題を扱っているのだが、コルバートの文章は押しつけがましさがなく、冷静に事実とそこから導かれる推論を語ってくれるので、ポジティブに読み進められる。政治家や企業、社会などを批判することに主眼が置かれてしまうアクティビスト系の言動には、どうしても拒絶反応を持ってしまうからだ。

二酸化炭素の問題を、これまでは温暖化という軸だけで捉えていたのだが、本作を読むことで、それが一面的な理解でしかないことに気づかされる。二酸化炭素量の増加によって海水が酸性化すると、例えば貝や甲殻類、サンゴなどが自分の体を形成するためには石灰化が必要なのだが、それが困難になってしまう。サンゴの白化は、単に海水温の上昇によるものだけではなさそうだ。今年はカニが不漁で、いつも親戚が送ってくれる大分・姫島の養殖車エビも生育が悪いようだが、もしかすると海水の酸性化が影響しているのかもしれない。

温暖化という側面だけを見ると、地球の長期的な氷河期~間氷期の気候変動の方がインパクトが大きそうだが、環境変化による生物種の絶滅や適応による変化が起きることで、これまでにない未知の要素が生じる可能性がある。それはつまり、これまでとはまったく異なる世界が地球上に展開されるかもしれないということだ。新型コロナのようなウイルスにも影響しているのかもしれない。

何よりも、この酸性化を引き起こした主体は人類だという事実がある。本作でコルバートは、これまでに地球に生物種の大絶滅を引き起こした彗星衝突のような事象に対し、人類がそれ以上の脅威になっていることを警告する。我々は脅威であり続けるのか、道を引き返すことができるのか。残された時間は、決して多くはない。