【甲府―大分】巻き返しへの希望

アダイウトンのスキルフルなゴールで追いつかれて、大分トリニータのゲームプランは崩れたように見えた。ゴールデンウィークの連戦を手薄な選手層でカバーするために、おそらく片野坂監督は金曜日と月曜日にメンバーを振り分けた。今節のメンバーを見る限り、先制逃げ切りの布陣としか思えなかったので、ここで追いつかれてしまったのは致命的かと思えた。

しかし、この日はなかなか良い形でチャンスメイクができていなかった野村がゴール前で存在感を示し、藤枝戦のゴールを再現するかのような流れの決勝点を保田が生み出した。これによって、大分の交代カードは守備の活性化というコンセプトに戻り、終盤のあからさまな時間つぶしも奏功して無事に逃げ切ることができた。

前線で交代投入されたキム・ヒョンウや木本といった明日を担うべき若手が、監督の指示を忠実にこなした上に、しっかり声も掛けて意識を合わせようとしていたところも頼もしい。有働には出番が回ってこなかったが、この3人の活躍が起爆剤にならないと後半に向けた巻き返しは難しい。その意味では、期待そてもよさそうな気にはさせてもらえた。

大分には、今節の中で見えた大きな変化が2つある。ひとつは、DFラインからの展開で藤原が前線へのフィードを担っていたこと。これまでの藤原は、とにかく安藤に預けることが多く、自分で蹴れる場面でも横パスを出し手ばかりだった。おそらくは監督の指示だとは思うが、できることをやらないのはもったいないから、このまま彼にその任を委ねてほしい。

もうひとつは、宇津元が自信を取り戻したこと。前節の野村へのアシストで、ビルドアップにおける役割と周囲の期待を実感したのではないか。ただ走るだけでもなく、囮役を担うだけでもなく、しっかり攻守に貢献している感覚は持てているはずだ。

2-1で勝ったという事実だけでなく内容も含めて、大分のここからの巻き返しに希望が感じられるゲームだった。