【箱根駅伝】10区の難しさ

今年の箱根駅伝は、原監督の宣言通りに青山学院大学が圧倒的な強さで優勝した。早稲田や明治が低迷する一方、国学院創価、東京国際など新興勢力が台頭しており、大学のネームバリューだけではない強化策が不可欠であることを示している。シード権争いでは、最終10区で東海が順位を落とし、法政に奪われてしまった。今回は、この点に着目してみたい。

東海大学のアンカー吉冨は明らかに体調を崩しており、苦しい表情で走り続けていた。最下位に専修の中山も同様だったが、やはり10区特有の難しさがあったように思う。大手町で大声援を受けながら、仲間や取材陣の待つゴールへ飛び込まなければならないプレッシャーももちろんあるだろう。だが、それ以上に「待つ」ことの難しさもあるのではないか。前日の往路スタートから30時間近くも自分のスタートを待ち、その間には様々な情報が錯綜する。繰り上げスタート、途中棄権という可能性もあり、順位やタイム差も刻々と変化する。それらを長時間にわたって処理しながら待つという工程は、生易しいものではないはずだ。

王者青学は、昨年に続いて10区に中倉を起用したが、メンタル面も考慮しての選考ではなかったか。責任感が強すぎても苦しいだろうし、そうは言っても最後を飾るにふさわしい選手を起用したいだろう。そうなると、5区の山登りや6区の山下り同様、10区にもスペシャリストが求められるのではないだろうか。10区でスプリント勝負という状況にはなかなかならないし、他校と競り合う可能性も低いので、淡々と自分の役割をこなせる選手が適任なのだ。そう、強く感じた大会だった。