【映画】グレート・スクープ

原題は"Scoop"とシンプルだが、邦題では余計な形容詞がついたことで安っぽい印象を受ける。内容としては、英国王室のアンドリュー王子をめぐる未成年買春疑惑を扱った「事実を参考にしたフィクション」で、アンドリュー王子とBBCのニュース番組でアンカーを務めるエミリーの対決が見どころ。王室に一定の遠慮を示しながらも、何とかインタビューで言質を取ろうとするBBCの戦術に対し、王室側の対応は脇が甘く、SNS時代という世間の情勢を認識できていなかったようだ。

「ザ・クラウン」などを見ていても感じたが、英国王室は自分たちが国民のヒーローでありアイドルであるという幻想を抱いているのだろう。だからこそ、自分たちだけに都合の良い情報であっても国民が、あるいは英連邦、ひいては全世界が信じてくれるという思い込みがあるように描かれている。僕はそれほど英国王室に興味があるわけではないが、ここまで同じように描かれるということは、少なくとも英国社会にはそのような前提があるのだろう。

アンドリューを演じるルーファス・シーウェルは「高い城の男」や「ザ・ディプロマット」でも存在感のある演技を見せていたが、本作での役作りは異質ながら完璧。表情や台詞回しに留まらず、目の泳ぎ方までもが巧みに演出されている。特殊メイクの効果もあって、ルーファスが演じていることを忘れてしまう場面も多かった。対するエミリー役のジリアン・アンダーソンは「X-ファイル」のスカリーだが、緊迫感を持った対峙は実に深みがあって見事な演技だった。