【映画】ウルトラマン: ライジング

ウルトラマン: ライジング」は、アメリカンなコメディの要素と日本らしい小ネタが融合した斬新なエンターテイメント作品だった。原作のウルトラマンとは異なるヴァースの物語で、ウルトラマンは親子二代という設定だ。ただ、それ以上に本作を特徴づけているのは、怪獣の赤ちゃんエミが登場することだ。

その姿はウルトラマンに出てきたラゴンを思わせるが、行動は「Dr. スランプ」のガっちゃんか「オバケのQ太郎」のO次郎を思わせる奔放さ。ラゴンは見た目が似ていることに加え、「ウルトラQ」で人間が卵から孵化させた子を連れ帰ったことに通じるし、「ウルトラマン」でぶら下げていた原爆のオマージュのようなシーンも見られた。

作中で記者のアミが語る「子どもは怪獣みたいなもの」という台詞からは、敵の子どもであっても子どもは未知数なのだから、先入観で見ずに教育すればまともに育つはずというロジックが読み取れる。日本を舞台にした本作の設定と合わせて考えるとアジア系に対する蔑視とも取れなくもないが、許容される範囲にはありそうだ。

また、最後はウルトラマン親子が協力してスペシウム光線を発射するなど、家族の結束が勝つという文脈にもなっている。わかりやすいといえばそれまでだが、ややロジックに無理があるところも目についた。

それにしても、日本文化を理解しつくしたような小ネタの嵐には、思わず苦笑せざるを得ない。怪獣が現れるのは代官山だったり白金台だったりと、米国映画はもちろん、日本映画でもまず出てこない設定。アミとケンが会食した「とんかつ とんき」は、目黒に本店がある名店だ。野球に関しても、ケンのお母さんが阪神ファンでいかにもな法被を着ていたし、キャッチャーがバッターに話しかける場面は往年の野村克也を思わせる。

原作の「ウルトラマン」を期待して見ると肩透かしを食らうが、斬新なエンタメとして見れば十分に楽しめる。ミドルクレジットでは、ケンの母親がM78星雲で存命であることが仄めかされるので、次回作にも期待したい。