【甲府―大分】途上の開幕

コロナ禍で新しいブラジル人選手の入国ができず、キャンプ直前の地震と開幕直前のコロナウイルス陽性と続き、大分トリニータのチーム状態がよいと想像する要素はひとつもなかった。下平監督も、コンディションは良くないというコメントを出して防衛線を張っていたことからも、不安しかない第2節の開幕だった。

僕が好む4バックの採用や下田から前線に縦パスが供給されることなど、明るい情報もあった。しかし、試合の冒頭は押し込まれてまったく形を作れず、前半の中盤くらいからどうにか攻撃を見せるものの、キャスティングもうまくない。井上はあくまでチャンスメイカーだし、右が小出で左が三竿では推進力に欠ける。坂のビルドアップは相変わらずワンテンポ遅いし、渡邉や町田はもっとゴールに近いところでないと持ち味が出ない。もちろん、中盤の適性がないとは思っていないのだが、昨季に決定力を示したのは町田であり、シーズン終盤で得点を重ねたのは渡邉だ。監督の交代で、そういった知識や経験が引き継がれずに失われているとしたら、それは致命的な問題だろう。

結果的にペレイラの同点弾に救われたが、トレーニングマッチでもスコアレスだったり、得点者が坂とペレイラだったりと、前線が価値を示せていない。コンディションも準備も十分でないとはいえ、今の状態では得点を取る形が昨季以上に見えない。GK吉田を最後のセットプレーに参加させた英断は評価するし、ヘッドでゴールに絡んだことも事実。しかし、ゴール前の落球した上に、なかなか立ち上がれなかったプレーを見る限り、ゴールマウスを安心して任せられる状況ではない。1年でのJ1復帰を目指すなら、コンディションが上がってくるのをいつまでも待ってはいられないはずだ。