【テニス】ジョコビッチ問題の結末

アレックス・ホークがジョコビッチのビザを金曜日の夕方遅くに取り消したのは、月曜日から始まる全豪オープンに向けて、裁判に持ち込まれてもジョコビッチの利益がなくなることを想定していたのだろうと思っていた。ところが、オーストラリアの連邦裁判所は、土曜日にジョコビッチの面談を実施して日曜日には判決を出すという異例のスケジュールで対応した。当初伝えられていたケリー判事の再任ではなく、3名の判事によるフルコートの裁判となり、上訴ができないために最終的な判断が下されることになった。

もうひとつ、僕にとって意外だったのは、政府側がジョコビッチの虚偽申請を問題にしなかったこと。争点をここに置いて単純な話にするのではないかと思っていたのだが、確かに考えてみればこの程度の虚偽で入国している人は少なからずいるはず。いったん入国してからメディアの情報で再審査したかのような印象は、あまり望ましいとは言えないだろう。あくまで政府は、ジョコビッチが反ワクチン運動の象徴的な存在であることを理由に挙げたが、報道によれば最初のビザ取り消しが無効化された後に反ワクチン、反政府系の活動が活性化していたとのこと。支持者へ感謝を伝えた行為も影響していると思われるが、外形的にはジョコビッチが余計なことをしてしまったようだ。

ジョコビッチには、今回の政府勝訴の一環として「向こう3年間の入国禁止」という措置が想定されている。オーストラリアの入国管理は厳格なので、これをジョコビッチにも適用する可能性は高い。僕の経験では、カロリーメイトも取り上げられたし、のど飴ですら入国管理官は許可するかどうか悩んでいた。これもすべて防疫管理の視点なので、新型コロナウイルス絡みとなれば、厳しい判断も致し方ないだろう。

【映画】エターナルズ

評価も難しいし、好き嫌いも分かれそうな何とも言い難い作品だった。まず何よりも、誰がヒーローで誰がヴィランなのかよくわからない。それは本作が打ち出す多様性の一部であるとも言えるが、映画を楽しみ上で方向性が示されないのは非常に居心地が悪い。僕はRPGをプレイする際も、自由度の高いシナリオはあまり好きではないし、サブクエストには興味を持てない。本作では、誰のどのような視点に共感するかを視聴者に委ねている感があるのだが、これだけの情報でそれを決定できるほど価値観というものは単純ではないのだ。

キャスティング面では、「ゲーム・オブ・スローンズ」でロブ・スタークを演じたリチャード・マッデンが、同じくジョン・スノウを演じたキット・ハリントンの共演は、それだけでも興味をそそられる。「シリコンバレー」のディネシュ役だったクネイル・ナンジアニが、うって変わってイケメンキャラになっているのは驚きだし、アンジェリーナ・ジョリーのクセの強い役どころにも意外性がある。見どころが十分なだけに、かえって視点の置き方に迷ってしまうのは難点と言ってよいだろう。

ミッドクレジットとエンドクレジットを見る限り、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のシリーズにつながりそうな雰囲気だが、もともと登場人物が多彩なところに本作の多様なメンバーが追加されると複雑になりすぎてしまわないだろうか。MCUの世界観が十分に感じるし、今後の展開にも期待したいところではあるが、最近のマーベルの方向性が急激な拡大を志向しているように見えるところに懸念を持たざるを得ない。やりすぎてしまうと、元に戻すのは難しいから。

【テニス】ジョコビッチ問題の行方

日本では全豪オープンと呼ばれる大会に参加するために入国したオーストラリアでの手続きに関して、ジョコビッチがオーストラリア政府からビザを抹消された問題。空港での入国時点で適切な書類を提出しなかったという理由での抹消という入国管理官の判断は、裁判によって覆された。限られた情報を整理して自分なりに考えてみると、これはあくまで入国管理官の手続きの不備なのだと思われる。つまり、ジョコビッチに対して抗弁の機会を与えておきながら、その提示した期限を待たずにビザを失効させてしまったということ。あくまで「管理官の判断を取り消す」という判決であって、「ジョコビッチの入国の妥当性」は判断されていないはずだ。

そして、移民担当大臣のアレックス・ホークが二度目の抹消を行ったが、これは大臣の権限に基づくもの。これを覆すために、ジョコビッチ側は「相当に合理性を欠く判断」という主張のようだが、国家主権の一部である行政権にかかわる判断なので、その合理性を裁判所が覆すのは困難だろう。統治行為論とは言わないものの、このレベルの判断を裁判所が「オーバールール」してしまっては、将来に向けて行政も司法も成り立たなくなってしまうのではないだろうか。

前回の訴訟を担当したケリー判事が、再びこの案件を担当するという情報もあるが、それは「前回と同じジョコビッチ寄りの判断」を見越したのではなく、「前回もオーストラリア国家や国民にとって不利益な判断をしたのではない」ことを明らかにするためではないか。それはつまり、ケリー判事の名誉挽回的な位置づけのようにも感じる。ジョコビッチの弁護士も「難しい仕事」とコメントしているようだが、それは事実だろう。

【アート】渋谷2丁目アートプロジェクト

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渋谷駅の東口、ヒカリエ脇にある工事現場の仮囲いを利用して開催されている渋谷2丁目アートプロジェクト。直接ペイントしたものでないことは残念ですが、渋谷でこれだけの規模のストリート系アートが楽しめるのはうれしいです。画像は田中功起の作品と野沢裕の作品ですが、小林健太や石井海音ら総勢8名のアーティストが参加しています。

【映画】リトル・シングス

これだけ配信系ドラマが充実し、内容や作りのレベルも格段に向上していると、「映画」とは何なのだろうと考えざるを得ない。一般的な長さである2時間前後というのは、人を映画館という閉鎖環境に閉じ込める前提で作られているとしか思えないので、それだけ濃密に仕上げることが映画の宿命なのではないだろうか。

さて本作「The Little Things」だが、ストーリーとしては歯切れが悪く、終盤の描写にも物足りなさを感じてしまう。では駄作なのかと言われれば、答えはNOだ。なぜなら、これはラミ・マレックの演技力をひたすら楽しむものだから。もちろんデンゼル・ワシントンジャレッド・レトも名優で見せ場はあるのだが、序盤で高飛車だったマレック演じる刑事が徐々に弱さを出してゆく流れにこそ見応えがある。

タイトルは「ささいなこと」という意味だが、これはラストのワシントンの行為の裏にあるマインドだろうし、「大義」の対義語として使われているように感じる。大義を果たすために捨ててもよいもの。その解釈は、まさに人それぞれの価値観に裏付けられている。時間の経過によっても、その持つ意味は変化する。マレック演じる刑事のこれからの人生にとっては、決して「Little」ではないだろう。

【グルメ】バースデーデザート

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昨日は僕の誕生日。子どもの頃から好きだったトップスのチョコレートケーキを買うことが多いのですが、今回は神楽坂のメルベイユで買ってきたメレンゲ菓子と妻の手作りチョコサラミをデザートにいただきました。一年がどんどん早くなっているので、やり残したことがないようにしないとね…

【Disney+】ボバ・フェット

ホークアイ」終了の翌週から配信された「ボバフェット」。スターウォーズからマンダロリアンを経由する流れでのDisney+だったが、個人的にはボバのキャラクターを十分に理解できていないこともあり、ストーリー自体にはなかなか入り込めないでいる。相方のフェネックを演じるミン・ナ・ウェンは、「エージェント・オブ・シールド」ではエージェント・メイとして活躍しているだけに、そちらの印象が勝ってしまう。

しかし、それでもこの作品は面白い。スターウォーズの世界観に完全に乗っているからだ。惑星タトゥイーンが舞台になっているというだけでもワクワクしてしまうのだが、いかにもスターウォーズらしい生物が登場し、いろいろな種族が酒場で交流しているところなどは、ダイバーシティインクルージョンの究極の世界のようにも思える。エピソード2でスノーピアサーを思わせるような列車から敵が攻めてきた場面では、必然性も戦術的な意図もまったく理解できなかったが、アクションシーンの環境設定だと思えば気にならない。

ただ、ボバ・フェットの設定を「大名」と訳してしまったことには疑問が残る。どうやらこれは原作でも「daimyo」らしいのだが、バックグラウンドをよくわかっていない人たちには「日本的なもの」として受容してもらえたとしても、日本史を知っている日本人にとってはイメージがかけ離れ過ぎていて狙った効果は得られないだろう。このあたりはローカライズの難しさではあるが、もう少し考えてもよさそうに思う。