【テニス】ジョコビッチ問題の行方

日本では全豪オープンと呼ばれる大会に参加するために入国したオーストラリアでの手続きに関して、ジョコビッチがオーストラリア政府からビザを抹消された問題。空港での入国時点で適切な書類を提出しなかったという理由での抹消という入国管理官の判断は、裁判によって覆された。限られた情報を整理して自分なりに考えてみると、これはあくまで入国管理官の手続きの不備なのだと思われる。つまり、ジョコビッチに対して抗弁の機会を与えておきながら、その提示した期限を待たずにビザを失効させてしまったということ。あくまで「管理官の判断を取り消す」という判決であって、「ジョコビッチの入国の妥当性」は判断されていないはずだ。

そして、移民担当大臣のアレックス・ホークが二度目の抹消を行ったが、これは大臣の権限に基づくもの。これを覆すために、ジョコビッチ側は「相当に合理性を欠く判断」という主張のようだが、国家主権の一部である行政権にかかわる判断なので、その合理性を裁判所が覆すのは困難だろう。統治行為論とは言わないものの、このレベルの判断を裁判所が「オーバールール」してしまっては、将来に向けて行政も司法も成り立たなくなってしまうのではないだろうか。

前回の訴訟を担当したケリー判事が、再びこの案件を担当するという情報もあるが、それは「前回と同じジョコビッチ寄りの判断」を見越したのではなく、「前回もオーストラリア国家や国民にとって不利益な判断をしたのではない」ことを明らかにするためではないか。それはつまり、ケリー判事の名誉挽回的な位置づけのようにも感じる。ジョコビッチの弁護士も「難しい仕事」とコメントしているようだが、それは事実だろう。