【アカデミー賞授賞式】まさかの主演男優賞

追悼コーナーのトリをショーン・コネリーではなくチャドウィック・ボーズマンに努めさせ、作品賞を先に発表して迎えた主演男優賞のプレゼンテーション。大腸ガンで逝去した「マ・レイニーのブラックボトム」のチャドウィックが受賞するとの前評判だったが、プレゼンターのホアキン・フェニックスが大方の期待を裏切って告げた名前は、授賞式に参加していないアンソニー・ホプキンスだった。

振り返ってみると、チャドウィックの場合は配信系の作品でもあり、死というドラマチックな状況が結果的に煽ってしまったとはいえ、そもそもアカデミー賞の審査対象は話題性ではない。そう考えれば、致し方ないところなのだろう。ただ、それでも若手のリズ・アーメッドあたりでもよかったように思う。彼の「サウンド・オブ・メタル」での演技は素晴らしかったし、独特の存在感は光っていたからだ。

主演男優賞の発表が終わって、授賞式の会場にも中継したWOWOWのスタジオにもなんとも言えない空気が流れていた。この後の流れやコメントを、チャドウィックに寄せて作りこんでいたのだろう。尻切れとんぼのようになってしまったストーリーを紡ぎ直すことは誰にもできなかった。それにしても、こんな役を担わされたホアキンは、やはりジョーカーだったということか。

主演男優賞以外では、助演女優賞のユン・ヨジョンのスピーチもよかった。アジア系らしい表情ながら、ジョークを交えてアメリカンな雰囲気を作りだしていた。作品としては、ノマドランドは見ておかねばならないだろう。

【浦和―大分】戦術の課題は監督に

見応え十分の好ゲームだったが、大分にとっては勝ち点を逃したことが何とも悔やまれる。せっかくの町田の2ゴールを無駄にしてしまったが、このように珍しい選手が結果を残すとそれを帳消しにしてしまうのは大分の伝統芸だ。浦和のゴールをどれも防ぐのは難しかったと思うし、攻撃に関してもこの戦力でできることはやってくれたと思う。それでも勝ち切れないのは、戦術の問題と考えてよいのではないか。

守備重視のサイド起用ながら早々に失点してしまい、リードした時点でDF刀根を投入して攻撃のカードを使えない状況にした。確かに小出はイエローをもらっていたので道理はあるのだが、終盤に藤本を入れられたら展開は違ったかもしれない。結局、スタメンの11人とベンチの7人は監督の人選であり、交代策も監督の采配なのだ。せっかく合流した外国人選手をベンチにも入れないのは、戦術というよりも自分のスタイルに染めないと気がすまない監督の独り善がりでしかない。個の力を頼らなければならない場面も、必ず訪れるのだ。

ペレイラはまだしも、エンリケトレヴィザンを早く使って欲しいし、クロージングにならない刀根の投入はもう見たくない。ルヴァンカップの神戸戦はどうでもよいが、次節のエスパルス戦が大きな意味を持つだろう。田中達也に続いて後藤に決められるようでは、もう先が見えなくなってくる。

【Disney+】ファルコン&ウィンター・ソルジャー エピソード6

全6話と短めの構成だったので、あっという間に完結してしまった「ファルコン&ウィンターソルジャー」。この余韻の残し方は、次のシーズンがあることをうかがわせる上に、いろいろと大胆な展開が秘められていることも予感させる。キャプテン・アメリカの称号は行方がはっきりしたが、それによってあぶれたキャラクターはどこに行くのか。ジモの動向も気になるが、何よりもシャロン・カーターのダークさが気になる。

最終話を見終えて、この作品を映画にしなかった理由がわかった気がした。ここまでのストーリーでも人種差別の問題は大きく取り上げられていたが、最終話では「価値観が対立する中では、自分にとっての正義は相手にとって侵害でしかない」というこちが色濃く打ち出される。ファルコンの長いセリフに籠められた制作者の思いは、映画では過剰に見えてしまうだろう。ドラマであれば1話ごとにテーマをずらすことができるが、映画では山場に来るトピックにどうしても目が行く。映画としてはあの山場では重すぎて、大衆受けはしにくいし、マーベルやアベンジャーズのファンでも賛否が分かれそうな気がする。

いずれにしても、まだ続編制作は発表されていない。エミー賞への登録が、「ワンダヴィジョン」がミニシリーズである一方で本作はドラマ部門だということが、今のところ唯一の手掛かりのようだ。ファルコンとバッキーに縛られると展開が窮屈になるが、キーワードとして最終話に出てきた「エージェント・カーター」ならかなり膨らませることができそうだ。この方向性が日の目を見ることを、密かに期待しておこう。

【ルヴァン杯】大分―東京

ミッドウィークのカップ戦なので、何が何でも勝ってほしいという思いもなく、大分の形にならない攻撃に前向きな兆しが見えればよいと思っていた。その意味ではチャンスは数多く作り出せていたし、長谷川の視野の広いサイドチェンジが復活したのは今後に向けて本当に大きな光明だった。

しかし、点が取れない。髙澤はシャドーの方が合うのだが、長澤が負傷で伊佐を休ませる意図はわかるので、トップ起用は致し方ないところ。小林成豪を温存できたので、次につなげてもらいたいところだ。それにしても藤本の出来は、期待が大きかっただけに不満でしかない。自陣ペナルティエリアでの不用意なハンドに加え、マイボールではないルーズボールをアウトにしてスローインしようとしたあたりも、状況把握能力の欠如を如実に表していた。

守備陣では刀根がよかった。DFラインのコントロールも前線はのフィードも、これまでより数段自信が感じられ、問題となるような点は見当たらなかった。失点の場面は永井を褒めるしかないだろう。

片野坂監督の采配で不満なのは、サイドの交代カードを残していながら井上の足が吊った時点では交代枠が残っていなかったところ。いかに井上のスピードが魅力だとはいえ、90分走り続ければ疲労も溜まる。90分の中での選手起用については不十分な点があるし、せっかく合流したエンリケトレヴィザンをベンチにも入れなかったのは、いかにも片野坂監督らしい采配ではあるが、サポーターとしては物足りない。

【Disney+】ファルコン&ウィンター・ソルジャー エピソード5

ファルコン&ウィンターソルジャーの最終話を控えたエピソード5は、「マーベル史上かつてないダークな展開」ということが予告されていた。そうなれば当然、本作のヒール役を担っている2代目キャプテン・アメリカにファルコンとバッキーが立ち向かう内容であることが、容易に想像された。しかし、それは思った以上に深いテーマに沿ったストーリーだったのだ。

初代キャプテンは、その資質であった愛国心と自己犠牲によって米軍の、ひいては米国のシンボルでありアイコンたり得た。ところが2代目は自己実現の欲求が強すぎて、それがために人を殺めてしまうキャラクター設定。そんなヤツにキャプテンの盾は預けられないという展開に加え、黒人(ここで「アフリカン・アメリカン」という表記を使うと話の本質が見えにくくなるので…)は米国の象徴にはなり得ないという非常に現実的な見解が示される。"Black Lives Matter"の問題もあり、最近はアジア系に対するヘイトも取り沙汰されるアメリカは、やはりWASPの支配から逃れていないということなのだろう。

これまで洗脳の影響もあって、唯我独尊的なキャラクター設定だったバッキーの表情が柔らかくなり、人間味を取り戻したかのような描写がなされている。これが最終話、そしてMCUフェーズ5につながる転換点なのかもしれない。この後に控えるロキやブラック・ウィドウ、そしてスパイダーマンにも期待が高まる。

【大分―柏】無得点症候群

先日このブログに「香川を使わない理由はない」という書き方をしたことを、まずは訂正したい。相手にサイドを封じられたときに、香川は何もできなかった。これは高山や福森にも言えることだが、パスを受けて戻すか迷って詰まるかどちらかになってしまうのだ。特に香川の場合、三竿ともども左利きなので、戻ってボールを受けたときにはどうしても前に出す選択を取りにくい。

そう考えると、高畑の起用は納得できるのだが、逆にハーフタイムで下げた理由がわからない。確かに相変わらず細かいミスは多かったが、高いポジションを取れていたし、香川に代えたことでそれができなくなってしまった。同様に髙澤も下がったが、前半に痛めた首の影響ならやむを得ないが、そうでないなら脅威を与えられるストライカーを失うことは柏に対するプレッシャーを弱めるだけのような気がする。PKを得た場面も髙澤が蹴っていればと感じたが、シュートが決してうまくない伊佐ではなく小林成豪が町田が蹴るべきではなかったか。

その意味では、いつも前半スコアレスを狙う大分が、今日は前半から得点を奪いに行くメンバーだった。結果的にスコアレスで前半を終え、守備的な布陣に変更したのはなぜだろうか。「点が取れそうにないから守ろう」ということなら、ホームゲームでは消極的すぎる。そもそも攻撃の交代カードが乏しい中では、先行されたら手が打てないではないか。監督を含めた無得点症候群が蔓延していることが懸念された。

ただ、悪いことばかりではない。サイドを封じられたときに井上がカットインしたり、ボランチインサイドを使ったビルドアップをしたりという選択肢が増えた。これは昨季にはあまり見られなかったことだ。長谷川と下田のポジションがもう少し高ければ、さらにチャンスは増えるはず。それによってサイドが空けば、本来の大分のスタイルも蘇るだろう。

【フィギュアスケート】国別対抗戦

フィギュアスケート国別対抗戦の2日目までを見て感じたのは、個人成績のプレッシャーが薄まってのびのびとした演技をする選手がいる一方、コンディションが不良であるにも関わらず期待を煽られたために無理をする選手がいたこと。特に宇野昌磨は、調子の上がらないジャンプに気を取られてスピンやステップがおろそかになっていたのが残念だった。そんな中で輝きを放っていたのはジェイソン・ブラウン。米国チームのキャプテンとして、Instagramでは「キャプテン・アメリカ」を自称してチームを盛り上げながら自身も楽しんでいる様子が感じられた。そして演技も、4回転を最小限にとどめて美しい振りを堪能させてくれるプログラム。この系譜はアダム・リッポンに通じるものがある。

ペアでは、木原龍一の成長が際立った。リフトでの安定感に加え、若い三浦をリードしようとする意識が随所に見られた。アイスダンスの小松原夫妻もリフトやツイズルでは大きな進歩があったが、美里のスケーティングが浅くてメリハリがないところに上位陣との差が浮き彫りになっていた。

初日のテレビ朝日のカメラワークは、とにかくひどかった。世界選手権のエキシビションストックホルムのテレビクルーが見せたリンク上を滑りながらの撮影も邪魔でしかなかったが、アングルやズームなどで「見たい部分を見せてくれない」映像はまたく楽しめなかったのだが、2日目には大きく改善していたので自浄作用はあるということなのだろう。もう国別順位をあおらなくてよいし、ペア解説の小山朋昭が演技の流れを遮ぎるコメントも聞きたくない。男子は終了したが、織田信成による日本選手の言い訳を代弁するようなコメントも必要ないのだが…