【U-23アジアカップ】日本―イラク

序盤こそイラクの守備ブロックがハマり、日本が得意のパスワークでビルドアップすることを阻んでいた。ボールの出しどころに迷い、無難なパスを選択する。それ自体は、負けたら終わりのノックアウトステージでは、よくあること。そしてこの試合に勝てばパリオリンピックの出場権が決まるのだから、手堅い試合になるこおてゃお互い想定内だろう。

しかし、その均衡は日本の中央突破で破られる。サイド偏重という批判が高まっていた大岩監督の戦術だったが、準々決勝の決勝点は細谷への縦パスから生まれたように、この試合も細谷のストライカー本能から生み出された。藤田からのボールを、最後は細谷がコースを見極めて振り抜いて、美しい先制点が日本にもたらされた。

この時点では、まだまだどちらに転ぶかと言う状況だったが、前半も終盤に差し掛かったところで追加点。こちらもサイド起点ではなく、荒木が中央でオフサイドラインを突破してのゴール。細谷のゴール同様、コースを狙ったタクティカルなシュートだった。この時間帯での2-0は、イラクにとっても後半の戦い方を変えざるを得ない状況に追い込まれたはずだ。

後半の中盤以降はかなりオープンな展開になり、日本が多くのチャンスを作りながらも、決められずに時間が進む。ただ、ボールはしっかり持てていたし、カードをもらうようなプレーもほとんどなく、小久保も安定していたので余裕はあっただろう。細谷のヘッドが決まっていれば優位に進められたかもしれないが、イラクのプレーが過激になることもあり得たので、その意味では悪くない終わり方とも言えるだろう。

中国戦のレッドカードで3試合のサスペンションを経た西尾の先発起用はないと思っていたが、大岩監督は終盤の守備固めで左サイドバックに起用した。これは西尾にとってもチームにとっても、明確なメッセージだった。すでにオリンピック本大会に向けた準備が始まっている。