【ドラマ】リプリー

イタリアを舞台に、3人の米国人を中心に繰り広げられる犯罪の物語。モノクロの映像で映し出されることで、心理描写に深みを与えている。そして殺害した後の遺体処理の場面に延々と尺を取り、ちょっとしたシーンも表情と小道具で緊張感を与える演出が特徴的。主人公トム・リプリーはもともと詐欺師なのだが、エピソードが進むにつれてその行いが極端になってゆくとともに、演じるアンドリュー・スコットの表情にあくどさが強まってゆくあたりも、演出の妙といえる。

ヒロイン的な存在として登場するマージを演じるダコタ・ファニングは、すべてを察しているかのような達観した表情を見せるのだが、実は真相にはまったく迫ってこないというシニカルな見せ方で、これはある意味コメディ要素なのかもしれない。ローマ警察の警部ラヴィーニを演じるマウリツィオ・ロンバルディは、間の抜けた捜査ながら自尊心だけは強く、こちらもコメディにありがちな設定をそれらしくこなしている。

それにしても、この作品に登場する金持ちたちにはまったく感情移入できないし、うらやましさも感じない。この時代のパーティは暇つぶしであり、財産を蕩尽するためのものだったのだろう。犯罪に巻き込まれた人たちの噂話に現を抜かすことで空虚な生活をあぶりだしていて、視聴者は彼らに起こる悲劇を期待しつつ、次にどんな展開が待っているか気になって見続けることになる。

全8話のオチは「そうくるか」とは思わせるものの、この先の展開に余韻を持たせているので、スピンオフでもシーズン更新でもよいので製作してもらいたい。