【アカデミー賞授賞式】まさかの主演男優賞

追悼コーナーのトリをショーン・コネリーではなくチャドウィック・ボーズマンに努めさせ、作品賞を先に発表して迎えた主演男優賞のプレゼンテーション。大腸ガンで逝去した「マ・レイニーのブラックボトム」のチャドウィックが受賞するとの前評判だったが、プレゼンターのホアキン・フェニックスが大方の期待を裏切って告げた名前は、授賞式に参加していないアンソニー・ホプキンスだった。

振り返ってみると、チャドウィックの場合は配信系の作品でもあり、死というドラマチックな状況が結果的に煽ってしまったとはいえ、そもそもアカデミー賞の審査対象は話題性ではない。そう考えれば、致し方ないところなのだろう。ただ、それでも若手のリズ・アーメッドあたりでもよかったように思う。彼の「サウンド・オブ・メタル」での演技は素晴らしかったし、独特の存在感は光っていたからだ。

主演男優賞の発表が終わって、授賞式の会場にも中継したWOWOWのスタジオにもなんとも言えない空気が流れていた。この後の流れやコメントを、チャドウィックに寄せて作りこんでいたのだろう。尻切れとんぼのようになってしまったストーリーを紡ぎ直すことは誰にもできなかった。それにしても、こんな役を担わされたホアキンは、やはりジョーカーだったということか。

主演男優賞以外では、助演女優賞のユン・ヨジョンのスピーチもよかった。アジア系らしい表情ながら、ジョークを交えてアメリカンな雰囲気を作りだしていた。作品としては、ノマドランドは見ておかねばならないだろう。