【銀色夏生】つれづれノート⑯

読者の声に耳を閉ざしているスタンスが許せなくて、読むのをやめていた銀色夏生の作品。でも、そんなことにこだわらずに、読んでみることにしました。彼女はいまだに読者からのフィードバックは基本的には読まず、出版社の担当者が選んだものだけに目を通しているようです。

彼女のエッセイは、読みようによってはまったく面白くない、ただの主婦の日常を書きなぐったものです。自分の娘に対する冷めた第三者的な視線や、生活することだけで目一杯の人に比べたらまったく生活感のない気ままな暮らしには嫌悪感を覚えることすらあります。それでも、これほどまでに飾らず、感じたままを書いているエッセイも数少ないのではないでしょうか。

ネット上の掲示板や2ちゃんねるYahoo!知恵袋などに見られる無責任な書き込みにも通じますが、人間の価値観って本当に多種多様なんですよね。自分には到底信じられないようなことを、当然のこととして考えている人がいくらでもいることを思い知らされます。それを考えれば、銀色夏生のように僕とは異なる価値観を詩的な言葉で淡々と綴られていることに、ある意味潔さを感じてしまうのです。

今回は長女の「カーカ」の留年騒動やら、長男「さく」のいじめ被害など、子どもが抱える苦難を親の視点から冷静すぎるくらい客観的に語られるところが興味深いです。

http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=200901000521