【映画】「モールス」の邦題は失敗

8/5から公開されている映画「モールス」。原題は作中で繰り返し登場する台詞の「Let Me In」で、こちらの方が完璧に映画の本旨を伝えているのに、「モールス」ではまったくお門違いです。原作小説のタイトルのようですが、映画の構成とはまるで合っていませんね。

この映画はB級映画の枠組みで、可能な限りこだわってアートに徹したらこうなるという印象の作品。ところどころ、あまりにもお粗末な部分はありながらも、最後まで緊張感をキープでき、映像の美しさとメッセージのせつなさが記憶に焼き付きます。芸術作品として見るならば、コマの長さや効果音の使い方、それに音楽が絶妙です。エッセイストで詩人の銀色夏生が酷評していた「クローバーフィールド」の監督でもあるマット・リーブスは、妙なところで特撮やエンタテイメントへのこだわりを見せますが、そんな冗長な部分を補って余りある映像に仕上がっているのです。

主人公の少年が「いじめ」に逢うプールでのシーンのカメラの位置やアングル、刑事が家宅捜索する際ののしつこく奇をてらわない演出。斬新な面といかにもな面が融合して、心地よいリズムとなっています。主演女優のクロエ・グレース・モレッツは、とても14歳とは思えない演技です。撮影時点では作品上の設定である12歳だったのだとすると、表情や演技には恐ろしいくらいの存在感があり、「子役」で括ってしまうにはかなり無理があります。今後の活躍に期待できそうです。

http://morse-movie.com/