【人事の話】退職勧奨は非情じゃない

退職勧奨…これはつまり、会社がある特定の社員に「退職してはどうか?」とお勧めすることです。「そんなことをするのは労働基準法に反する違法行為」だと思っている人も多いと思いますが、「勧奨」することは違法でも何でもありません。ただ、「強要」することは違法で、内容は「辞めてはどうか?」という言い方でも、「会社側は上司と人事が4人で囲んで部屋からその社員を退出できないようにして2時間延々説得する」なんて場合は強要とみなされます。

違法行為ではなくても、社員に退職を勧めるなんてひどい会社だと思うことは多いし、ある意味そう思われても当然だと思います。でも、果たして本当にそれはひどい、「非情な」行為なのでしょうか?

例えば前の会社ではトップの営業マンで、期待されて転職して来たにも関わらず業績が伸びない社員がいます。とても給料に見合わない業績に、回りの社員からも白い目で見られていて、本人もそのことに悩んでいる場面を想像してください。一般に伝統的な日本企業では、厳しく叱咤した後、それでもダメなら「人事部付」扱いにして閑職に「飛ばす」とか、社外に出向させて雇用だけは守っていました。多くの外資では、恐らくその社員に「降格・異動」と「退職勧奨」をセットで行い、退職する場合には退職金を上乗せするような措置を取ります。

外資では結果的に雇用を確保しない場合もあるけれど、中途半端に閑職のポストだけ用意して「本当はいらない社員」ということを明言しない企業の方が、よほど本人のためにもならないのではないでしょうか。要は本人が判断して、自らの道を選択する術を用意してあげることが大事なのです。言い難いから、トラブルになるからと、口をつぐんで閑職に飛ばすことの方が、よほど非情な措置であるという見方もできる、と僕は思っています。その結果、喜んで自ら退職を選んだ社員に感謝されたこともあります。もちろん、退職強要などは論外ですけどね。