【人事の話】昇給は誰が決める?

日本企業の伝統的な考え方では、昇給や昇進は会社、つまり人事の取りまとめた提案に基づいてトップが決めるというやり方が主流でしょう。これは全社の中での不公平を排除して、全体最適を目指すという考え方ですよね。でも、最近特にアメリカ系の企業では、この権限を現場の管理職に委譲する傾向が非常に強くなっています。直属上司に部下のマネジメントをさせる上で、評価権だけではなく昇給や昇進まで(ある程度の範囲内で)決定させるのです。

これは全体最適よりも、個々の社員のキャリアやモチベーションに焦点を当てたものといえます。外資では「自分の処遇(給料の金額や等級)は会社との個別契約であり、同僚に開示すべきものではない」という考え方があるからこそ可能なのかもしれません。実態としてはもちろん、自分の給料がいくらなのか同僚や部下に話してしまうケースは多いのですが、それはあくまで自己責任です。

特に中途採用が主流の企業では、ある社員の給料が「社内のどの位置にあるか」よりも、「転職市場で競争力があるかどうか=社内に残ってもらえる金額か、あるいは退職(転職)のリスクが大きいか」にポイントがあります。個々の社員のモチベーション、会社への帰属意識、そして退職リスクが良く見えているはずの直属上司に、できるだけ権限を与えてコントロールさせようということなのです。

会社にもよりますが、極端な場合には社員を引き留めるために10%を超える大幅な昇給をさせたり、特別ボーナスを支給することも外資では所属部門長の判断次第でOKというケースもあります。それほどまでに、マーケット(転職市場)を意識しなければならないのが現状ということなのです。