【人事の話】グロスアップとは

企業にはいわゆる「福利厚生」の制度があって、それを享受しても社員には所得税がかかりません。でも、実は条件があるんです。それは「規程にちゃんと定められていて、特定の人ではなく全社員が(ある条件の下に)一律に利用できること」。「ある条件」とは、例えば「会社命令で転勤した社員には社宅を提供する」というような場合のことです。

さて、ここからがポイント。会社が成績優秀な社員を海外旅行に連れて行ったり、特定の役職者に換金性の高い商品券を配ったらどうでしょう? それが規程に明記されていなくても、それらの行為に違法性はありません。ただし、「福利厚生」とはみなされないので、もらった社員には所得税がかかるのです。

100万円かかった「ハワイ・クルーズの旅」に参加した社員は、現金をもらったわけではないのに例えば(総所得に応じてですが)20万円が税金として控除されます。つまり、その月の手取り給料は目減りしてしまうのです。これではせっかくの「ご褒美旅行」も台無しです。

そこで多くの企業が取る手段がグロスアップ。手取りが減らないように、帳簿上は特別手当を支給したことにして帳尻を合わせます。上記のハワイの例(税率20%)では、100万円の旅行費用+25万円の手当支給ということにすると20%は25万円になり、本人の手取りは損も得もしない計算になるんですよ。グロスアップは他にも、海外駐在社員の現地課税に対する補填でもよく使われます。