【サッカー】実況アナウンサー論

サッカー中継の実況を担当するアナウンサーには、実に多彩な特徴がある。今や解説委員になってしまったNHKの山本浩なら冷静に、そして彼にとってはコーナーキックのボールが曲がるかどうかが大問題らしく、キッカーが巻いてくるボールを蹴れば「曲げてきたっ!」と興奮気味に伝える。同じ場面で元テレビ東京・現スカパーの金子勝彦は「スワーブをかけてきた!」と、誰にもわからないような表現でツウぶりを発揮する。

さて、今年はTBSがBSとCSでのJリーグ放映権を持っているため、BS-iやスカパーのTBSチャンネルでも毎節中継がある。ところが、この実況を務める武方直己はあまりにもひどい。彼は1963年生まれで僕と同学年だから、決して若手ではない。それなのに、あまりにも伝え方が拙いのだ。とにかくゴール前のシーンになると、カン高い声を裏返らせんばかりに張り上げて叫ぶ。それは選手の名前だったり「左足!」「ヘッド!」とシュートの種類であったり。それも、かなりの確率でホームチーム側にあからさまに立った実況をする。

そんなことは画面を見ているファンにはわかるはずだ。視聴者にしてみれば、テレビではわかりにくい、現地実況だからこそ伝えられる付加価値が欲しいのではないか。どこにフリーの選手がいるか、パスコースがあるのかないのか、DFの枚数は足りているのか・・・

サポーターと一緒に盛り上がると言う考え方もあるだろう。でも、テレビを見ているのはホームチームのサポーターばかりではないし、ホームのコアなサポーターはスタジアムに行ってしまうから、アウェイチームのサポーターの方がより熱心な層のはずなのである。

そういう意味で、僕が支持するのは倉敷保雄だ。彼のように、自分もサッカーが好きなアナウンサーが一番だと思う。ただ、同じ好きでも久保田光彦のように知識のひけらかしに走って解説者に否定されるのも行き過ぎだ。最悪なのは選手のこともロクに知らずに、用意された(しかも間違った)原稿を読むだけの関根信弘。八塚浩も頑張ってはいるが、話し相手がいないと間が持たず、特に試合の終盤に伝えることがなくなるとリポーターと無駄話をするのは許しがたい。インプレー中に長々と過去の試合の話をするのは、基本的にはルール違反だ。
(文中敬称略)