【DVD】コーチ・カーターの現実

この作品は、カリフォルニアのとあるバスケットボールのコーチを任された元全米高校代表が、荒れたチームの生徒たちを成長させる学園モノの王道ともいえるストーリーになっています。最初は楽な道を選んでいた生徒たちが、徐々に自分を高める方向に導かれていくのですが、主演のサミュエル・L・ジャクソンの好演もあって、なかなか感動させてくれます。サミュエル・L・ジャクソンのコーチっぷりはまさにハマっていて、こんなコーチがNBAにいてもおかしくないと思ったくらいです。

でも、この作品が感動的だということは、裏を返せば「世の中、そんなにうまく事は運ばない」ということなのでしょう。授業に出ない生徒を更正させるために体育館をロックアウトするなんて、まさにアメリカ的ではあるけど、実際にやったらかなり反発を招くでしょうし、訴訟にもなりかねません。だからこそ、この作品に「理想的なシナリオ展開」を求めてしまうのかと思うと哀しいですね。

もう1点、僕があらためて気づいたのは、高校バスケアメリカでは生活に根付いているという事実です。アメリカン・フットボールでは金曜日が高校、土曜が大学、日曜がプロと試合開催日が棲み分けられているし、日本の高校野球のような熱狂はアメリカではNCAA(大学バスケ)に見ることができます。"March Madness(3月の狂乱)"という言葉があるように、アメリカ国民はオフィスでも仕事にならないくらい大学バスケに熱狂するそうです。この作品でも、満員の観客の前で繰り広げられる高校対抗バスケが描かれ、日本とは違う底辺の厚さに感動するとともに、日本で8月に開催されるバスケの世界選手権で日本がよい結果を出すのは100年早いと思わされました。