【映画】ゴジラ-1.0

アマゾンプライムでの配信が始まった「ゴジラ-1,0(マイナスワン)」は、神木隆之介の演技に見応えがある。口籠りながらも言うべきことを言葉にする際の表情は素晴らしい。上陸したゴジラによって銀座が壊滅した状況を理解したときの絶叫も、日本映画にありがちなステレオタイプではなく、切羽詰まったリアルさに満ち溢れていた。特殊効果を施していないので、顔が妙にきれいで現実味を欠くが、それもありがちな「戦争映画」の要素を薄めるためだとすれば理解できる。

ゴジラの背びれが迫ってくる場面は最初こそ「ジョーズ」へのオマージュを感じたものの、スケールの大きさはその比ではなく、機雷と機銃掃射で応戦するシーンと合わせて迫力満点。東京で国電を噛みちぎる場面も、鉄棒の体操選手を思わせる浜辺美波の演技がコミカルに見えない程に緊迫感があった。総合的に見て、アカデミー賞視覚効果賞を受賞したことには、まったく違和感がない。

海上の最終決戦での民間船の増援は、絵面だけ見ると「シン・ゴジラ」の電車爆弾のパロディにも見えるが、スキューバダイビングの世界では死活問題の「減圧」を使って強敵を倒すという発想と合わせて海の世界を描くことへの真剣さは伝わってきた。

このまま特攻で終わったら「日本軍国主義礼賛」になるところだったが、脱出パラシュートの実装という大どんでん返しは、ある意味見事だった。とはいえ、ゴジラという外敵の襲来に対して自らの生命の危険を冒してまで国を守れというロジックは、戦争と何ら変わらない。ゴジラを他国の軍隊と置き換えれば、軍国主義と同じ発想が展開されているわけで、非武装中立では立ち行かないことが強く描かれているように感じた。