【映画】パラサイト 半地下の家族

アカデミー賞で作品賞、監督賞など4部門のオスカーを受賞したという程度の予備知識で見た「パラサイト」だが、ある意味大きな衝撃だった。まずは脚本。一歩間違えばベタなコメディでしかなさそうな展開ながら、奇想天外でありながら現実感を帯びているという点で見事なバランスだった。ただ、これを普通の監督が低予算で撮るとどうしようもない駄作になってしまうし、日本のドラマにありがちな叫んで泣いて終わってしまうパターンに陥りがちだ。そうならなかったことが、アカデミーの作品賞や監督賞のポイントだったのではないだろうか。

そのセンスは、カメラの回し方に表れている。位置やアングルで格調高い雰囲気を醸し出し、ひとつの場面を情感たっぷりに描写する。ストーリーを追うだけにならないところが、この作品の持つ味わいなのだ。俳優陣の評価が低いのも、演技がポイントではないからであり、どう見せるかに集約されていたと言ってよいだろう。ポン・ジュノ監督の手腕に尽きるということなのだ。

もうひとつのポイントは、音楽にある。妙な効果音や収益前提のタイアップに走らず、米国ドラマのようにその場面に合う、いやその場面に何かをプラスアルファできるような音楽を効果的に使っていた。このあたりは、ぜひ日本の映画やドラマにも見習っていただきたいところだ。スノーピアサーに続いて米国でのドラマ化も決まっているようだが、東アジアをごっちゃにしたような妙な取り扱いだけはして欲しくない。