【ドラマ】偽りの銃弾

全8話のリミテッドシリーズにしては、とにかく設定や人間関係が複雑で、中盤を過ぎても誰が誰で、どう絡んでいるのかわかりにくかった。なかなか物語に入り込むこともできずに、眠気と戦いながらの視聴になりかけていたが、終盤に来て予想を完全に裏切るどんでん返しが待っていた。ネタバレを避けるために詳しくは書かないが、通常のドラマにはない展開になって初めて、序盤に感じていた登場人物の嫌味全開の台詞回しや表情の意味が理解できるようになった。

その観点で、主人公マヤを演じるミシェル・キーガンの演技にまったく共感できなかったのだが、終わってみれば素晴らしい演技だったとあらためて感じる。マヤの義母ジュディス役のジョアンナ・ラムリーの強烈なヒールっぷりも、さすがの一言だ。そして誰よりも存在感を発揮していたのが、刑事サミを演じたアディール・アクター。彼の予測不能な行動なしには、この作品をここまで楽しめるものにはできなかったことだろう。

英国ドラマに描かれる貴族層の暮らしや思考の背後には、間違いなく強い階級意識がある。現代におけるそれは旧態依然としたアンシャンレジームなのだが、そこに本作の終盤でジュディスが語っていた「攻撃されたら守りに入る」という防衛本能が加わることで、社会が分断されてしまう。ストライキなどの労使対決もそうだが、英国を含む欧州でデモのような示威活動が盛んなことも、このような分断が起因となっているように思う。

少なくとも僕個人は、イングランドに城を構えるような家柄の人たちとは友だちになれそうもないし、社会的な関りを持たない方がお互いのためだと感じた。