【ドラマ】ザ・クラウン シーズン1~2

Netflixのドラマ「ザ・クラウン」はエリザベス女王の時代を描く壮大なストーリーで、全6シーズンのうち2シーズンごとに主要なキャストが入れ替わる。このシーズン1~2ではエリザベスをクレア・フォイ、夫のエディンバラ公フィリップをマット・スミスが演じている。結婚直後のまだ若い時期を描くだけに、性格的にも尖った感じをやや過剰に押し出していて、二人の衝突も激しいものがある。

このシーズンで特徴的なのは、フィリップが家族を含めてナチスとのつながりを持っていたことが強調されていること。原作者のピーター・モーガンユダヤ系という事実を踏まえて考えると、この描き方は明らかに意図的なものだろう。フィリップは「どこの馬の骨ともわからない、元ナチの排除すべき存在」という色が非常に強く、マーガレット王女の奔放さとともに、王族の影の一面を彩っている。

「ザ・クラウン」というタイトルが示すように、エリザベスが運命づけられた王という地位は強大な権力を持つと同時に、逃れられないしきたりや周囲の期待があり、必ずしも「なってうれしい地位」ではないということが表現される。マーガレットはどちらかといえば「なりたかった」一方で、エリザベスは「なりたくなかった」ことが、性格的な背景とともに明らかにされる。

これは、一般的な企業の社長や首相などでも同じこと。それなりの権限がある一方で、期待と責任を背負わざるを得ず、部下や国民からは自分たちの意に染まない部分について酷評される。現代において日本国首相は誰もがあこがれる職業ではないし、稀有な「なりたい人」に才覚が備わっていなければ大変なことになってしまう。歴代の英国王もそんな期待と責任を背負う中で、離婚するために英国国教会を興したり、セレブを娶ったりという方向で自我を通してきたということだろう。

シーズン3~4ではオリヴィア・コールマン、そして5~6ではイメルダ・スタウントンエリザベス女王を演じるので、比較して演技力を堪能できそうだ。顎を突き出すようにして相手に圧をかける仕草がクレア・フォイには特徴的だったが、オリヴィアとイメルダにも引き継がれるだろうか。