【映画】あの夏のルカ

HISのオンラインツアーでイタリアのチンクエテッレを訪れた際に、その中のひとつの村が舞台になったと聞いて興味を持っていた作品。シーモンスターの少年ルカが人間の街ポルトロッソで、ベスパ欲しさにトライアスロンの大会で優勝を目指す中で、人間の少女やその家族、友人のアルベルトとの交流からベスパよりも大事なものを見つけるというストーリーだ。設定に無理のある部分も少なくはないが、ファンタジーだと割り切れば気にならない。

悪役はありがちな男子3人組で、ハリー・ポッターのマルフォイ一派のような雰囲気。主人公たちをサポートするジュリアはいかにもイタリアにいそうな明るくて理屈好きな少女で、父親のマッシモは強面ながらときに愛情と優しさを醸し出す。ルカの母親は感情の起伏が激しく、おばあちゃんはすべてを理解して包み込んでくれる。このあたりも、ファンタジーにありがちな設定ではあるが、人間味に溢れていてイタリア人気質もしっかりと表現しているので、現実離れしていないから不思議だ。

チンクエテッレをベースに描かれるイタリアン・リヴィエラの風景は美しく、まるで僕の好きなゲーム「ぼくのなつやすみ」をプレイしているかのようでもある。スキューバダイバーでもある僕にとっては、海の中の描写も旅情を掻き立ててくれる。夏休みにエアコンの効いた部屋で旅の気分に浸り、子供の頃に抱いた懐かしい感情が蘇る作品はなかなか貴重だ。日本版エンディングの「少年時代」も、その気分の余韻をしっかりと味わわせてくれる。僕にとっては、夏休みの時期に最適な作品だった。

実は主人公たち以外にも、街を訪れたり暮らしたりしているシーモンスターがいることが明かされるが、それはまるで「シークレット・インベージョン」のスクラル人を思わせる。彼らが素性を隠す必要のない状況こそが、ダイバーシティインクルージョンの実現した社会といえるのだろう。