【映画】アバター:ウェイ・オブ・ウォーター

設定を理解しないまま見始めたので、最初のうちは何の物語なのか、誰と誰が何のために戦っているのかといった部分もまったくわからなかった。3時間を超える大作だけに、最後まで興味が続くかどうか不安にもなっていた。ところが、転機となったのは海中世界の描写の美しさ。スキューバダイバーでもある僕にとっては、海中の色鮮やかな魚たちも、イルカやエイのような大型魚を模した造形も、魚群に突っ込む感覚も、すべて懐かしいものだった。ここから一気に、作品の世界観に引き込まれてしまう。

戦闘のシーンのリアリティも秀逸で、沈没する船にどのように海水が入ってくるか、踏ん張っていたところに波が来たらどうバランスを崩すかといった細かすぎる部分まで、しっかりと計算されて作りこまれているのがわかる。ストーリーとしては、同じキャラクターが敵に何度も捕らえられたり、いかにも危なそうだった人物が死んだりと月並み感もないわけではないが、ビジュアルの美しさと精密さがすべてのネガティブ要素を覆い隠して余りある。

ただ、何となく「ネイティブ対侵略者」という構図にしてネイティブをベイビーフェイスに仕立てていながら、彼らが様々な生物を道具として「使役」している様子には違和感があった。クジラのようなハンマーヘッドシャークのような生物は「仲間」として描きながら、多くの生物を家畜同然に扱うのでは、人種差別と大差ないのではないだろうか。同時に、捕鯨反対派のように哺乳類を特別視するような見え方でもあり、前提としている価値観が偏っているようにも感じられ、後味が悪かったことも付け加えておく。