【ドラマ】亡国のスパイ~かくも親密な裏切り~

WOWOWで放送された英国ドラマ。フィクションであることをエピソードの冒頭で毎回謳っているのだが、最終話で登場人物のほとんどが実在の人物であることが明かされる。スパイたちの行動や会話はとてもリアルだが、交わされるジョークは今では明らかに女性やLGBT差別に当たるような内容だが、それ以前に「中学生かよ」とツッコミたくなるようなレベルのもの。オフィスでもエレベーターでも飛行機でも、所かまわず喫煙することと合わせて、この時代の空気感が如実に描かれていた。

ただ、プロットが複雑で時系列を跨ぐために、理解がなかなか追いつかないことも事実。朝鮮戦争ベルリンの壁真珠湾攻撃による太平洋戦争の開戦など、史実が織り込まれることでタイムラインが明らかになるとはいえ、そこまで近現代史に詳しいわけではないし、実体験のある世代でもない僕にとってはストレスを感じないわけにはいかなかったことが残念だ。

ホームランド」で活躍したニコラス・ブロディを演じたダミアン・ルイスが、本作のストーリーテラー的な位置づけであるニコラス・エリオットを演じる。「ホームランド」から12年が経ち、ルイスの表情にも年輪が刻まれてはいるものの、ちょっとした表情がいかにも彼らしさを表していて、懐かしい気分にさせられた。ベイルートが重要な舞台のひとつとなるが、この街の持つ不思議で独特な雰囲気が、本作に異国感と非現実館を加える要素になっている。