【ドラマ】アメリカン・クライム・ストーリー シーズン2

アメリカン・クライム・ストーリー」のシーズン1ではO.J.シンプソン事件を扱ったが、シーズン2はジャンニ・ベルサーチを殺害したアンドリュー・クナナンを追う。フィリピン系アメリカ人でゲイという難しい人物像だが、ダレン・クリスが恐ろしいまでになりきった演技を見せてくれる。ダレンは自身もフィリピン系であり、「グリー」でもゲイのブレインを演じているので、適任であることは間違いなかったはず。それにしても、ここまでアンドリューの心の闇を表現するのは容易ではなかっただろう。

アンドリューは頭の回転が早いだけに、言葉巧みに相手をコントロールすることもできたし、その結果としてジゴロのような生活もできたのだが、自信過剰に陥ってしまったために警察に尻尾を掴まれた。人間というものは、危機的な状況になればなるほど独善的になってしまう傾向があるが、それがために追い詰められた状況でも自分が主導権を握っていると思い込んでしまう。最終的にアンドリューが自ら死を選択したのは、その主導権を手放したくないという意思だったのかもしれない。

アンドリューは5件の殺人を犯したとされており、最初の2人は同性の友人との恋愛関係のもつれだが、最後はベルサーチという著名人が被害者となっている。そこまでの道筋にも、彼が自信を強めてゆく過程があり、同時に負のエネルギーも増していった。それを解放することができていたら、結果は違っていただろうし、死ななくて済む人もいたはず。社会がLGBTQをもっと受け容れていれば、そもそもこんな結果にはなっていなかったということなのだろう。