【映画】ダウントン・アビー/新たなる時代へ

アベンジャーズが代替わりを進めているように、長く続いているシリーズにとって主役の世代交代は必然。その意味で、バイオレットが亡くなるのは設定としても時間の問題だったし、ダウントンを去ってゆく者がいても仕方ないところだ。ダウントンが映画の撮影に使われるという仕掛けは悪くないが、学芸会風になってしまったのはちょっともったいない一面もある。総花的な全体像の中に、個々のエピソードを無理やり押し込めたところに、中途半端さが垣間見えてしまった。

しかしながら、このシリーズのファンを満足させるには十分すぎる内容だ。カーソンやバリー、パットモアら使用人にも見せ場を作っているし、「らしい」台詞もしっかりと用意されている。モード・バグショーを演じるイメルダ・スタウントンは、「ハリーポッター」のドロレス・アンブリッジ役でもおなじみだが、カーソン役のジム・カーターは彼女の実際の配偶者でもある。そんな実の夫婦の二人に対して、南フランス滞在の場面で帽子屋が誤解して「仲の良いご夫婦」と言うところも、楽屋オチ的な内容ではあるが、ファンにはうれしい仕掛けだろう。

映画版2作は、外部要因によって発生するイベントに沿って展開する。それによって、グランサム伯爵家の困窮やメアリーの奮闘というドラマが描いていた問題からは目が逸らされる結果となってしまった。バイオレットの逝去を経て伯爵家がどうなってゆくのか、もう一度原点に戻ってドラマの続きを見てみたい気がする。キャストを集めるのは現実的ではなさそうだが、ミニシリーズのような形でも実現してくれたらうれしいのだが…