【天皇杯】広島―大分

後半から完全に主導権を握られ、大分はシュートすら打てなくなっていた。延長に入ったらPK戦に持ち込むしかないだろうとは思ったが、それでもPK戦で勝てる感覚もなかった。伊藤涼太郎のゴールを守り切れなかったのは、まさに「守ってしまった」からで、攻め手を失った結果だ。ときおりサイドで高山がチャンスを作るが、そこからの仕掛けにまったく迫力がなく選択も遅くなった結果、広島の守備網にからめとられて行った。

 

そして、ついにPK戦。後藤、小林成豪、松本、島川までは大丈夫だという感触があった。エースのオナイウの失敗で敗れるという嫌な予感が杞憂に終わると、次の心配は星、高山、丸谷。しかし、大分はおそらく、PKの練習もしっかりこなしていた。練習すれば決まるというものではないが、頭の中でシミュレーションをして覚悟を決めておくことは重要だ。その意味で、失敗した広島の柴崎が蹴る前に見せていた表情からは、「腹が括れていない」感じが見て取れたのだ。

 

10人目での決着で笑顔を見せた高木だったが、おそらくここまで来たら自分が蹴って勝負を決めることを思い描いていたのだはないだろうか。代表クラスのGKとはいえ若い大迫が逆を取られ続けたのに対し、高木の読みはかなり当たっていた。キャッチングに不安を残す「俺たちの高木駿」は。これで自信をつけてくれたことだろう。