【映画】NOPE/ ノープ

この作品はストーリーとかロジックではなく、製作サイドが籠めたメッセージを演技と緊迫感を通して味わうのが正解だろう。率直に言って好き嫌いの分かれるところだと思うし、実際に僕と妻の評価もかなり異なった。リアリティがあるとは言えないし、展開にも大いに無理があるので、それらが気になってしまえばエンターテイメントとして楽しむことは難しい。

何となくスティーブン・キング原作の作品を思わせるような作りだが、謎の物体の造形が安っぽさを感じさせ、B級感を強めてしまうのはもったいない。エヴァンゲリオン使徒のようだという声もあるようだが、僕にとってはウルトラマンレオの円盤生物シルバーブルーメそのもの。MACを全滅させた強敵にして、ガレージにある資材を適当に組み合わせて作ったかのような安っぽさが酷似している。シン・ウルトラマンゼットンにも似ているので、やはりウルトラマン系の印象なのだ。

メッセージとして僕が受け取ったのは、ある意味「くだらないもの」に命を賭ける動画撮影者の虚しさと、危険を冒してまで苦労するのは黒人とヒスパニック、アジア系だということ。それにお金を払う課金者は明確には描かれていないが、つまりは白人ということだろう。目の前にチャンスがあればつかみ取りに行くとポジティブに捉えてもよいとは思うが、テイクするリスクとの対比においては何ともバランスが悪い。

そして、この作品の最大の欠点は、音楽が壊滅的なほどに合っていないこと。これは「20世紀少年」並みの出来の悪さだ。僕にアレンジだけでも任せてくれたらと思ってしまうくらい、まったく場面に合っていない曲が使われていた。