【TOKYO 2020】車いすバスケ男子 米国―日本

バスケの本場であり、前回大会の覇者でもる米国相手に、日本は決勝の舞台で互角の勝負を見せてくれた。負けはしたが、最後にファウルゲームを仕掛けるような展開に持ち込んだという事実が、日本の実力とパフォーマンスの素晴らしさを示しているといえるだろう。ただ、よくやったという気持ちもある反面、もっと行けたのではないかという思いも僕の中にはある。

立ち上がり、シュートタッチが合わない米国に対して、日本が一方的なリードを確保しつつあった場面。「こんなにうまく行くはずがない」という遠慮のような感覚が、日本チームにあったのではないか。これはどんなスポーツでもあるが、強豪相手に順調すぎる状況を作り出したときに、ふと立ち止まってしまうことがある。以前、テニスの錦織圭フェデラー相手にベーグルでセットを取りそうな勢いだったのに、ちょっとした心の迷いから逆襲を受けてしまったことも、その一例だ。

京谷ヘッドコーチも、この試合に勝って金メダルを取るというよりは、パラリンピックという素晴らしい舞台での王者米国との試合を純粋に楽しもうとしていたように感じた。それはそれで悪くないし、視聴者のことなど考えずにアスリートファーストでよい。選手たちの心に、何が残ったのか。それがパリ大会に向けてどうつながるのか。そして、彼らの人生がどう変わるのか。それが何よりも重要なことなのだ。