【映画】ドクター・ストレンジ

天才医師が主人公とくれば、どうにかして患者の死を避けようとして、それが叶わないときには運命を呪う。映画やドラマのストーリーとしては、それが定番だ。この「ドクター・ストレンジ」も似た部分はあるのだが、スティーブン・ストレンジは事故で自身の指先の技術を失い、それでも道を切り拓こうとしてスピリチュアルな方向に傾倒してゆく。僕が医療ドラマの医師に感情移入できないのは、自分が神にでもなったかのような発想になじめないからだ。ストレンジも同様だが、そこに東洋医学を通り越して精神世界を描かれると、その非現実感に納得してしまうから不思議だ。

その舞台はネパールだが、アジアというと武術、カンフー、ヤクザといったアイテムが散りばめられ、ハリーポッターのような西洋風の要素も見られるので、あまりステレオタイプな印象はない。素手の肉弾戦や必要以上に飛び跳ね、ひねりを加える傾向はあるが、それらはエージェント・オブ・シールドも含めたマーベル・シネマティック・ユニバースに共通して見られるものなので、すでに世界観に織り込まれていりと言ってよいだろう。

ニューヨーク、ロンドン、香港で世界に結界を張っているという設定は、いかにも大英帝国的な発想だが、皆が英語を使っていても違和感がないという状況なので致し方ないところか。さすがにここで、シドニーシンガポールを出すわけにはいかないだろう。すでに続編についてもアナウンスされており、配信が終了したばかりのワンダヴィジョンのエンドクレジットでは、つなぎの場面が描かれる。ワンダヴィジョンで存在感が一気に高まったワンダがどう絡むのか、1年後の公開に向けて期待が高まってくる。