【人事の話】解雇制限とメンタルヘルス

最近、ずっと頭の中にあるテーマがあって、人事の立場でそれを言葉にするのは誤解を生みやすいとは思いますが、あえて書いてみたいと思います。日本社会は外国に比べてストレスフルだとか、自殺者が多いという話をネットでよく目にします。それは、一度入社した会社を辞めにくいシステムを構築しているからではないかと思うのです。

労働基準法では厳格な解雇条件があり、それを満たさなければ会社都合で解雇することはできません。だからこそ、企業はリストラを敢行するために、「合意解約」を目指して自主退職を迫るのです。電通社員の自殺にしても、転職市場が比較的小さく、「転職=敗者」と見るような風潮も結果的にそれを助長してしまったのでしょう。実際、僕も新卒で入社した会社に退職の意向を伝えると、当時の上司は「絶対今より給料が下がるから、止めておけ」と翻意を迫りました。結局転職しましたが、給料は上がったし、仕事の内容も充実していました。

「辞めたいけど、辞められない」環境は、確実にメンタルヘルスを損ねる土壌になります。解雇しにくい法理を採用し、終身雇用だと言って転職を蔑むカルチャーを積み上げてきたからこそ、日本はストレスフルな社会になっていると言えないでしょうか。さらには「自分では何も決められない」ことで他責志向になり、かえってストレスが募っているように思うのです。自分が自分の人生の操縦桿を握っていれば、そんなにストレスを感じることはないのですが…