【コロー展】写実+レタッチの手法

東京・上野の国立西洋美術館で開催されている「コロー 光と追憶の変奏曲」を鑑賞してきました。実は東京都美術館の「芸術都市パリの100年展」を目指していたのですが、上野公園に入ったところで気が変わり、コローに変更してしまいました。カミーユ・コローは18世紀の末に生まれたフランスの画家で、印象派に至る直前のムーブメントだった「写実主義」に括られています。

作品は印象派ロマン主義のような派手なものではなく、非常に忠実に風景や人物の姿を写し取ったまさに写実といえるものが並んでいます。しかし、年代を経るごとに、その写実の手法に変化が見て取れます。焦点を当てたい対象が明確にわかるような手法が、徐々に取り入れられているような印象を、僕は受けました。それはフォトショップを使って画像をレタッチするように、画家が自分の見た映像を頭の中で組み替え直し、彩度や明度などで周囲との差異を際立たせていたということなのでしょう。

今回の目玉の「真珠の女」はルーブルでも見たことのある作品なのですが、構図や対象のせいで「コローのモナリザ」と評されます。しかし、どうも僕の目には、このふたつの作品はまったく関連性のない、別物にしか見えませんでした。

もう一点、この展覧会ではコローの作品の中に後代のルノワールやモネ、ゴーギャンらの作品がちりばめられています。対比という視点で見るにはおもしろいのかしれませんが、コローの作品を俯瞰しようと展示室を見回しても、「異物」が多すぎて全体像がつかみにくくなってしまったのは残念でした。

http://www.corot2008.jp/