【山種美術館】川合玉堂の遠近法

出先でふと思いついて、九段下の山種美術館に寄ってみました。勝手な思い込みで、庭園のある独立建築を想像していたのですが、実はビルの1階に入っていたので道に迷ってしまいました… 企画展として、ちょうど「川合玉堂展」を開催中。玉堂(ぎょくどう)は晩年に東京・青梅に居住しており、JR青梅線の御岳にあった彼のアトリエは「玉堂美術館」となっています。多摩地区に住んでいた僕としては、その点でも興味がありました。

作風としては、水墨画のような淡い色彩を駆使した日本画が特徴的です。黒の濃淡を主にしながらも、赤や緑などの色を効果的に配していて、印象に残るアクセントになっています。日本画らしく目に見えるすべてをデッサンするのではなく、選択と省略を用いて巧みな遠近法が見られるのも特徴ですね。

玉堂の掛け軸を見ていて感じたのは、彼がこの縦長の画面構成を見事に使いこなしていること。縦に長いということは、遠景と近景を対比させる構図に適しています。ダイナミックな近景に、少し空間を置いて重ねる微かな遠景が、山村ののどかな風景を描き出しているのです。配置の妙を遠近法で表したところに、川合玉堂に真骨頂があったように思います。峻険な山も壮大な滝もないけれど、里山の懐の深さを思い出させてくれました。

常設としては東山魁夷の作品なども数は少ないながら、鑑賞できます。平日の午後でしたが、意外なほどに来館者は多かったです。

http://www.yamatane-museum.or.jp/