【映画】シグナル

2014年に製作された米国映画で、MITの学生が謎の組織に拉致され、脱出を企てるという展開。この作品で何を描きたかったのか、最後までよくわからないまま終わってしまったが、特徴的なのは「主人公たちに感情移入できない」ことだった。ジョナとニック、そしてヘイリーの3人が変わり者のエリート学生として描かれていることだけでなく、ロジックを放棄して本能的に行動している様子には、どちらかと言えば嫌悪感が募ってゆく。

ジョナとニックが失ったものを考えると、「過去の自分に執着することの無意味さ」を描いていたようにも感じる。失ったものの代償として得た新たなパワーに気づかず、それを無駄にしてしまう。言い換えれば、過去の自分に執着するがあまり、未来を見失ってしまうということなのだろうか。ただ、それにしては設定も台詞も十分ではなかったように思うし、ヘイリーの位置づけもよくわからない。ジョナとニックが失ったものとしてしか扱っていないようで、男尊女卑の思考が透けて見える。

キャスティングはなかなかハマっている。ヘイリーを演じるのは「ベイツ・モーテル」でエマ役だったオリヴィア・クック。撮影は「ベイツ~」とほぼ同時期と思われるが、どちらも鼻に気管チューブを入れているところが共通しており、彼女の持つ弱さを表現していたように感じた。

また、CSIシリーズのラングストンとして知られるローレンス・フィッシュバーンが、防護服を着た謎の人物デーモンを演じる。こちらも、彼の独特な風格と怪しさがマッチしており、キャスティングによって他の作品の要素を引用するかのような効果をもたらしていた。