【映画】コンテイジョン

数ヶ月前に僕の周りでも話題になっていた「Contagion」だが、当時はパンデミックに対する恐れもあり、また情報過多になることを避けたかったこともあって見ることはなかった。周りの状況がだいぶ整理できてきたこのタイミングで、いよいよ見てみようと思ってNetflixで鑑賞するに至った。

事前情報で聞いていた通り、2011年の作品ながらまるで現在の世界の状況を予見していたかのような描写は、空恐ろしいほどだった。感染への恐怖とワクチンの不足から治安が悪化する光景は、今の米国では人種差別というファクターを挟んでいるとは言え、奇妙なほどに符合する。言い換えるなら、ミネアポリスアトランタ、DCなどで起きているデモを逸脱した暴動は、COVID-19に対する不安が政府や社会への不満として現れてしまっただけなのではないかと思える。

物語にはジュード・ロウ演じるウェブ・ジャーナリストが登場し、政府を糾弾する。しかし、それが真実だとしても、知ることにどれだけの意味があるのかという疑問を僕は抱いた。「知る権利」という言葉があるが、その裏返しに「知らない自由」もあるはず。政府にしても企業経営にしても、目先の被害を最小にすることよりも中長期的な利益を優先して意思決定するもの。長期的な利益のために優先度を下げられるのが自分だとしたら、客観的にはその判断は理解できるはずだと思いつつ、知らずに済ませるという選択肢もあり得るのだと思うのだ。

スティーブン・ソダーバーグ監督が揃えるキャストは贅沢だ。グウィネス・パルトロウの登場シーンは限定的だし、「CSI」のローレンス・フィッシュバーンや「ブレイキング・バッド」のブライアン・クランストンといったドラマなら主役級の俳優が脇をしっかりと固める。無駄のない展開で、真実味にあふれているところに見応えがあった。